サステナビリティのリーダーに密着!
ビジネスと社会貢献を両立する人と企業の深掘りシリーズ

車を買い替えるとき、外したタイヤを「売る」という発想を持つ人は、どれくらいいるでしょうか。新品カー用品の市場はおよそ1兆4,000億円。それに対して中古カー用品市場は、わずか700億円ほどです。まだ知られていないこの市場で、中古カー用品のリユースを広げようとしているのが、株式会社アップガレージグループ 代表取締役社長の河野映彦さんです。「使えるものを、もう一度必要とする人へつなぐ」。その言葉に込めた想いと、事業の先に描く未来を伺いました。

取材・編集:gooddo編集部

中古カー用品で、車のある暮らしを支える

弊社は、カー用品・バイク用品、そして最近少しずつ始めている自転車の、買取と販売をするお店を運営する会社です。直営店は今78店舗で、中古をメインに扱っています。本でいうブックオフさんのように、カー用品のリユースを専門にしている会社、と考えていただくとイメージしやすいかもしれません。

ただ、店頭での買取・販売だけではありません。フランチャイズビジネスも展開していて、加盟店の皆さまにさまざまなサービスを提供しています。実は弊社は、社内にエンジニアを40名ほど抱えていて、自分たちで開発した仕組みを取引先様に使っていただいているんです。売上の内訳は、アップガレージのリユース事業が6割、そこから派生した卸売事業が4割ほどですね。

そうなんです。弊社は、システムに長けた会社だと思っています。

たとえばタイヤは、走っている車ごとにサイズが全然違う消耗品です。中古の買取・販売だけでは全車種を網羅できないので、新品のタイヤを卸す仕組みも本部として持っています。この卸の仕組みを、今いちばん活用してくださっているのが、大手中古車ディーラーさんなんです。

大手中古車ディーラーさんは中古車を売るとき、摩耗したタイヤを新品に替えたり、ドライブレコーダーやカーナビを取り付けたりします。従来はいろいろな取引先から仕入れていたものを、弊社の仕組みを使えば、すべてまとめて仕入れられます。

弊社のエンジニアが専用のウェブサイトを作り、そこで注文してもらえるようにしました。ポイントは、カー用品は同じ車でも年式やグレードによってつくものが違い、間違えやすいこと。弊社のサイトはそもそも間違いが起きにくい設計になっていますし、わからないときに問い合わせをいただければ、あたかも大手中古車ディーラーさんの社内の仲間に聞いているかのように、弊社が対応します。

当時から自社サイトを運営していたのですが、開発を外部にお願いすると、要件定義から決めていく必要があって、時間で2倍、コストで2倍、掛け合わせると4倍のコストがかかるんですよね。でも、社内に開発機能があれば、それを4分の1にできる。だったら絶対に社内でできたほうがいい、というところから切り替えました。

そうやって自分たちで仕組みをつくっていくうちに気づいたのですが、事業とは突き詰めれば課題解決だと思っています。自分たちが抱えている課題は、他社さんも抱えている可能性がある。であれば、弊社の使っているものを使っていただければ、お互いwin-winです。

また、新品のカー用品を提供すれば、そこから中古が生まれ、仕入れられれば本業にも返ってくる。この循環をつくれることが、弊社の特徴だと思います。

中古車屋の店先に並べた「タイヤ」から

そうなんです。創業者はもともと中古車を扱っていて、そこからカー用品のパーツへと事業を広げていきました。当時は景気があまり良くなく、車屋さんも数多くある中で、差別化が難しかった。そんなとき、いらなくなった車を買い取ると、トランクにタイヤが入っていたり、カップホルダーや灰皿のような小物が残っていたりする。それを店先に並べてみたら、車そのものよりもよく売れたそうなんです。それなら事業にしよう、と。この一本のタイヤが、今の弊社の原点です。

私はもともと野村證券に入社して、その後、転職を考えたときに、この事業をやっている創業者と話をしたんです。自分がやりたかったことと、創業者が目指している世界、そしてこの会社が持っているリソースが一致したんです。それで、仲間に迎えてもらいました。

私は大企業にいたので、自分のやりたいことを実現するには、そのままだと15年くらいかかるだろうと感じていました。それを早くできる場所を探していました。

入社したのは2012年。私自身はエンジニアでも技術者でもありません。ですから、その翌年にエンジニア経験のある仲間に入ってもらって、仕組み化を広げてもらいました。今の弊社があるのは、彼のおかげと言っても大げさではありません。

2015年にはITの子会社を立ち上げ、後に本業の社長になるタイミングで、分かれているよりも一つにまとめたほうがいいと考えて一社化しました。

中古が「当たり前」になれば、暮らしはもっと軽くなる

そうなんです。車を買う際、中古車を買うというのは当たり前でも、ついているタイヤが中古で売り買いできると認識している人は、まだほとんどいません。これはもう布教活動と同じで、地道に広めていくしかない。

弊社には大きな資本があるわけではないので、テレビ広告よりも、SNSをゲリラ的に使ったり、イベントに参加したりして、コツコツ広げています。

新品カー用品の市場は全体で1兆4,000億円あるのに対して、中古の市場は700億円ほどと、まだとても小さいんです。そのうち弊社が270億円ほどを担わせていただいています。ありがたいことに一定のシェアはいただいていますが、裏を返せば、中古という選択肢がそれだけ知られていないということでもある。だからこそ、この市場を広げていくことが、弊社の役割だと思っています。新品市場の10%、20%に近づけるだけのポテンシャルは十分にあると考えています。

大きく2つあります。ひとつは、シンプルにリユースそのものの価値です。使えるものを、もう一度必要とする方へつなぐ。それ自体に意味があります。

もうひとつは、暮らしと命の安全を守ることです。これだけ物価が上がると、生活は苦しくなります。それでも、車を移動手段として使う方にとっては、乗り続けるしかありません。だからこそ、安全に、そして安く移動できることが欠かせないんです。

私たちが、しっかり点検した中古を手ごろな価格で提供することは、そうした方々の生活を支えることそのものだと思っています。趣味で車を楽しむ方の心を満たすだけでなく、日々の移動を支えるという意味でも、弊社は社会に貢献できると考えています。

命を預かるものだから。プロの目と機械が支える「安心」

やはりタイヤとホイールですね。消耗品ですから。ただ、実際に「売れるんだ」と気づくのは、買いに来たときが多いんです。安いから買いに来て、そこで初めて「ここは買取もしてくれるんだ」と知る。そういう順番の方が多いですね。

そうですよね。命を預かるものですから。だからこそ弊社は、プロのちゃんとした目と、機械を通して確認したものだけを提供しています。

たとえば歪みやバランスです。丸いものがちゃんと回るかどうかは、機械にかけないとわかりません。タイヤ自体も、正常に摩耗しているか、片側だけ減る「偏摩耗」が起きていないかを確認します。偏摩耗は運転の癖で出ることが多いのですが、そういうもののないタイヤだけを再販しています。

これだけ個人間のリユースが一般的になってもタイヤの売買がなかなか浸透しないのは、やはり見知らぬ個人からは買いたくないという心理があるからだと思います。取り付けも誰かがしなければいけませんが、それも弊社ならできる。そこに差別化があります。

それはできません。タイヤは使い切りなんです。ですから、しっかり残り溝があり、きれいな減り方をしているものしか扱いません。それ以外は処分料をいただいて廃棄します。交換の目安としては、次のような基準があります。

走行距離では、だいたい3万キロ。年数では、4年を過ぎると硬くなったり、ひび割れが出たりするので替えどきと言われます。

車は基本的に2年に1回、車検があります。そのタイミングで「この車も長く乗っているし、新品なら10万円だけど中古なら4万円で済む」と選んでいただける。今、そういう選択をする方が増えている実感があります。

90日で一回転する、宝探しのようなお店

弊社のお客様は、大きく2つのタイプに分かれます。以前は車好きの方が中心でしたが、今は「賢く買い物がしたい」という方も増えています。今は40%ほどが車好きの方、残りの60%ほどが、暮らしのなかで上手に車を使いたいという方々ですね。

車好きの方にとって、弊社のお店は宝探しのようなものなんです。中古なので、店にある一つひとつがすべて違う。弊社は在庫を90日で一回転させることを目標にしていて、1ヶ月に1回来ていただくと、次の月には半分くらいの在庫が入れ替わっている。だから「今日ここで買わないと、次に来たときにはもう売れている」。定期的に足を運んでいただける仕組みなんです。

多くは「安さ」です。というのも、世の中では、タイヤを買うときの体験そのものが、あまり良くないことが多いんですよ。たとえば「1本2万円」と宣伝されていても、そのタイヤが自分の車に合わないことがある。タイヤはサイズがたくさんあって、ふだん車に詳しくない方には、自分の車に合うタイヤがなかなか分かりません。お店で「これが欲しい」と伝えても「お客様の車には合いませんよ」と案内され、結局1本5万円くらいになってしまう。しかも交換しないと命に関わると言われれば、なかなか断れないですよね。

新品は価格が上がり続けていますし、こうしたわかりにくさもついて回ります。その点、中古であれば、プロが一つひとつチェックした安心なものを、納得できる価格で選べる。だからこそ、弊社のような存在に意味があると思っています。

「人のために汗をかこう」──新卒とともに育ってきた会社

弊社は創業初期からずっと新卒採用を続けていて、新卒社員を中心に成長してきた会社です。ですから、本当に人柄のいい人が多いですね。「人のために汗をかこう」という気持ちを持った人が多い会社だと思います。

もちろん車が好きな人も多いのですが、今は車好きではない人も4割ほどいます。「社会に貢献したい」「リユースをやりたい」「成長している事業に関わりたい」といった理由で入社する人が増えているんです。平均年齢も30代で、今年の4月には41名の新卒社員が入社してくれました。

エンジニアはエンジニアとして入りますが、それ以外の人は基本的に、まず店舗に配属されます。そこからいずれ本社に来てもらう、という流れです。以前は本社採用も試したのですが、あまりうまくいかなかった。やはり一度お店を経験したほうがいいと気づいて、そこは何度も試行錯誤しながら変えてきました。臨機応変に対応できるのが、弊社の良さかもしれません。

加盟店、メーカー、社会──それぞれと結ぶ「三方よし」

車関係のお仕事をされている方が多く、中古車ディーラーさんや、複数店舗を運営するメガフランチャイジーさんもいらっしゃいます。フランチャイズビジネスというと訴訟の話をよく聞きますが、おかげさまで弊社にはほとんどありません。お互いにきちんと儲かっているからだと思います。どちらか一方が儲けすぎると、やはり問題が起きますから。

日本車を、世界へ。25年ルールが開くアメリカ市場

 国内では、引き続き出店を進めます。まだ220店舗ほどの出店余地があって、最終的には500店舗くらいまでいけると考えています。ただ、そのためには人が必要です。人はそう簡単に採れるものではないので、人がやらなくてもいい仕事を減らすために、IT投資でどんどん効率化していく。それによって出店にも耐えられる体制をつくっていきたいんです。同時に、これから減ってしまうかもしれない車好きの方々へのアプローチも、続けていきたいと思っています。

はい。今アメリカで2店舗を展開していて、そこは日本車が好きな方のためのお店です。調子は良く、アメリカのほうがマーケットは大きいと感じています。映画『ワイルド・スピード』の影響もあって、日本車を改造するのが大好きな方が一定数いるんです。普段はテスラに乗って、もう1台は趣味として日本車をとことん改造する、というような方もいらっしゃいます。

鍵になるのが「25年ルール」です。アメリカでは、発売から25年以上経った車はクラシックカー扱いになり、右ハンドルでも輸入できる。それより新しい車は右ハンドルが認められません。ですから、25年以上経った日本のスポーツカーがとても高値になっていて、どんどん輸出されています。その25年以上前の車のパーツを持っているのは、おそらく弊社くらいだと思うんですよ。新しいパーツは基本的に合いませんし、復刻版もありますが、やはり当時物には当時物の良さがあります。

そうなんです。そこが弊社の根幹です。ネットで売りっぱなしにすると、良い在庫が海外に流れて、戻ってこなくなってしまう。だから今、海外向けのネット販売はむしろ縮小気味にしています。

アメリカにお店を出せば、現地で売り買いができる。日本でも売れるし、アメリカならもっと高く売れるものはアメリカへ。逆に日本のほうが高く売れるものが出てくれば、日本へ。双方向で循環できるんです。廃棄するものを海外へ持っていくのではなく、循環させられるものを、より価値の高い場所へつなぐ。使えるものを、次の誰かへ。それが、弊社がこれからも大切にしていきたいことです。

Profile

株式会社アップガレージグループ

代表取締役社長

河野映彦(こうの・てるひこ)

1981年、東京都出身。明治大学卒業後、2005年に野村證券へ入社し、リテール営業に従事。2012年にアップガレージへ入社し、社長室長、取締役などを経て、2018年にアップガレージ代表取締役社長、2023年にアップガレージグループ代表取締役社長に就任。エンジニアの内製化とシステム開発を軸に、カー用品のリユース市場の拡大と、日本車パーツの海外展開を牽引している。