

サステナビリティのリーダーに密着!
ビジネスと社会貢献を両立する人と企業の深掘りシリーズ
「ブックオフ」と聞いて、どんなイメージが浮かぶでしょうか。
不要になったものを売る、誰かが使ったものを安く買う——そんな“節約”の文脈で捉えられることが多いかもしれません。
しかし、その選択は本当にそれだけの意味にとどまるのでしょうか。日常の中で何気なく行っている行動が、実は資源の循環や環境負荷の軽減につながっているとしたら——その価値の見え方は大きく変わるはずです。
今回お話を伺ったのは、ブックオフグループホールディングス 執行役員 グループ戦略企画部 部長の長谷川 孝さんです。リユースのリーディングカンパニーとして成長を続ける同社が、いま取り組んでいるのが「8月8日リユースの日」プロジェクト。業界を横断した共創によって、リユースを“自分ごと”に変えていく挑戦です。
「意識せずにしていた選択が、実は循環につながっている」——その気づきをどう広げていくのか。ブックオフが描く未来について伺いました。
取材・編集:gooddo編集部
リユースを“当たり前”にする、ブックオフの進化
まず、ブックオフグループの事業について教えていただけますか?
ブックオフグループは1990年に「本」のリユースからスタートし、現在では国内外に約840店舗を展開しています。
国内の年間利用者は約8,800万人、年間の売買点数は約6億8千万点を超えています。また、アプリ会員数は約987万人にのぼり、リユース利用者のさらなる拡大にも取り組んでいます。
現在は「本」だけでなく、ソフトメディアやトレーディングカード・ホビー、アパレル、貴金属・腕時計・ブランドバッグ、スポーツ・アウトドア用品など、生活に関わる幅広い商材を扱う総合リユース企業へと進化しています。 さらに、百貨店や高級住宅地への出店によるプレミアムサービス事業の展開や、マレーシア・アメリカでの海外展開などを通じて、リユースの価値をより幅広い層へ、そしてグローバルにも広げています。
本からスタートしながら、かなり幅広い領域に事業を広げてこられたのですね。
はい。私たちは「リユースのリーディングカンパニーになる」というビジョンを掲げ、事業活動を通じてリユースの社会的な価値を高めていくことを大切にしています。
単にモノを売買するだけでなく、リユースという選択肢そのものを広げていきたいと考えています。
長谷川様がリードされているグループ戦略企画部は、会社の中ではどのような役割を担っているのでしょうか。
グループ戦略企画部は、企業活動によって生まれた成果を社内外に正しく伝える役割を担っています。
また、今の事業だけでなく将来の成長につながる新しい取り組みや投資を進めるとともに、そうした取り組みを担う人材を育てるための環境づくりも行っています。
「多くの人に楽しく豊かな生活を提供する」というミッションを実現するためには、企業の成長と個人の成長を両輪で進めていくことが欠かせません。
そのため、5年後、10年後も社会に必要とされる企業であり続けるために、「全従業員の物心両面の幸福の追求」という理念のもと、一人ひとりが成長できる環境づくりにも取り組んでいます。

「気づき」が、行動を変えていく
昨年から「8月8日リユースの日」という取り組みを始められたそうですね。こうした取り組みには、どのような背景や課題意識があったのでしょうか。
はい。私たちは、「8月8日リユースの日」をはじめ、体験イベントの開催やリユース本の寄贈、学校教育への参画、自治体との連携など、リユースをより身近に感じてもらうための取り組みを行っています。
その背景にあるのが、リユース事業が持つ社会的な価値と、そこに対する課題です。
ブックオフグループのリユース事業は、モノを循環させることで資源消費を抑え、廃棄削減にもつながるなど、事業そのものが社会に価値を生み出しています。
しかし一方で、「BOOKOFFの利用がリユースである」と認識されている方はまだ多くありません。多くの人がすでにリユースに関わっているにもかかわらず、それが社会につながる行動だという実感が十分に持たれていないという課題があります。
このままでは、リユースという行動自体は広がっていても、「社会にとって意味のある選択」としては広がらず、その価値が十分に発揮されません。
たしかに、意識していない人も多いかもしれません。
はい。BOOKOFFの利用やフリマアプリでの売買もリユースですが、それが「社会にとって良い選択である」という実感にはつながっていません。
そのため、「リユースの楽しさ」や、「意識せずともしていた選択が循環につながっていること」への認識を深め、より積極的にリユースを利用していただくことが重要だと考えています。
だからこそ私たちは、「特別なことをしなくても社会に貢献できている」という実感を、より多くの人に届けていきたいと考えています。
その具体的な取り組みの一つが、「8月8日リユースの日」です。
「8月8日リユースの日」は、どのような位置づけの取り組みなのでしょうか。
「8月8日リユースの日」は、リユースを“理解”から“行動”へとつなげるための象徴的な取り組みです。8月8日は、循環をイメージする「∞(無限大)」と同じ形の「8」が並ぶことに由来しています。
ブックオフが実行委員会の一員として2025年よりスタートし、今年2026年も8月7日・8日の2日間、環境省・経済産業省の後援のもと、31社の賛同を受けて秋葉原で開催を予定しています。
小学生とその保護者を対象とした体験型イベントで、企業ごとに設けられたブースで、リユースに関するさまざまな体験ができる場となっています。
例えば、実際にモノの価値を見極める体験や、リユースの流れを学べるワークショップなどを通じて、楽しみながら理解を深められる設計にしています。
リユースは小学校高学年の授業でも扱われていますが、「知っている」だけでは行動にはつながりません。そこで、実際に体験することで理解を深め、日常の行動へとつなげていくことを目指しています。
特に子どもを起点にすることで、その気づきを家庭に持ち帰ってもらい、
- 学校での「知識」
- イベントでの「体験」
- 家庭での「行動」
という流れを生み出すことで、リユースを社会全体に広げていきたいと考えています。


この取り組み、複数の企業が関わっているのが特徴的ですよね。
はい。この取り組みにおいて重要だと考えているのが、企業単体ではなく「業界として取り組むこと」です。
環境省の調査でも、2012年以降、過去1年でリユース経験がない人の割合が増加傾向にあります。市場が拡大している一方で、生活者の行動との間にはギャップが生まれています。
この状況を変えるには、複数の企業が同じ方向を向き、「社会全体の動き」として発信していく必要があります。
企業単独の取り組みではどうしても「一企業の活動 」として受け取られてしまいますが、業界として取り組むことで、初めて社会的なムーブメントとして認識されていくと考えています。
リユースは一企業だけで完結するものではなく、社会全体で広げていくものです。だからこそ、「8月8日リユースの日」を通じて共創の形をつくることに大きな意味があると考えています。
2025年の初回から26社と多くの企業に賛同いただき、2026年はすでに31社へと広がっている点にも、その手ごたえを感じています。

(画像:2025年リユースの日イベントでの賛同企業代表トークセッション)
体験が「自分ごと」を生み出す
昨年実際に開催してみて、どんな手ごたえがありましたか?
昨年2025年に開催した第1回のイベントは、リユース企業6社による合同開催としてスタートし、環境省の後援のもと、リユース企業に加えてシェアリングエコノミーやアップサイクルに取り組む企業など、26社からの賛同を得て実施しました。
当日は、お子さま259名を含む合計555名の方にご参加いただきました。
アンケートでは、9割以上の参加者が「体験を通じてリユースへの理解が深まった」「日常生活でも実践したい」と回答しており、企業ブースでの体験を通じてリユースを“自分ごと化”していただけたと感じています。
リユース人口の拡大に向けた一歩となる手ごたえがあり、こうした取り組みは継続していくことに大きな意味があると考えています。

やはり体験型ならではの結果ですね。
はい。特に印象的だったのは、「理解」だけでなく「行動意欲」までつながっている点です。体験を通じて初めて、自分ごととして捉えていただけた結果だと感じています。
参加された方からは、どんな声がありましたか?
参加者アンケートでは、92.7%がイベントに満足、85.4%が「次回も参加したい」と回答しています。また、93.4%が「理解が深まった」、97.4%が「日常生活でもリユースをしてみたい」と回答しており、体験が行動につながる手ごたえを感じています。
さらに、80.8%の方が「イベント前はリユースの日を知らなかった」と回答しており、リユースに特化した学びと体験の機会として、新たな気づきを提供できたと感じています。



社員の皆さんの反応も気になります。どんな声がありましたか?
自社ブースの運営は、普段BOOKOFF店舗で働く社員が行いましたが、イベントを通して「日々の業務では売上や在庫に意識が向きがちだが、その根底にある“リユースを広げる”という価値に立ち返ることができた」といった声がありました。
自分たちの仕事が循環型社会の推進につながっていることを実感する機会となり、モチベーションの向上にもつながっています。また、子どもとのコミュニケーションや他社との交流を通じて、新たな学びや気づきが得られたという声も多くありました。
本年の実施に向けても、BOOKOFF店舗社員が中心となり、子どもたちにより楽しんでいただくためのブース体験を意欲的に企画・検討しています。
他の企業からの反響についても教えてください。
賛同企業からは、お子さまや保護者の方と直接コミュニケーションができる機会になったことに満足の声をいただきました。
また、リユース企業の現場担当者が集まって何かをするという機会がこれまであまりなかったため、リユースを広げる仲間だという空気醸成ができたこともよかったと感じています。

リユースを「あたりまえ」にする未来へ
今後はどんな展開を考えていらっしゃいますか?
初回の実施を通じて、リユース企業に限らず、さまざまな企業から「一緒に取り組みたい」という声をいただきました。
今後は、ブース出展に限らず多様な参加方法を用意することで、より多くの企業や省庁が関われる形をつくっていきたいと考えています。
リユースの日にとどまらず、事業活動を通じて生活者にとってリユースをより身近なものにしていくことで、リユースのイメージをポジティブなものへと変え、業界全体の発展、そしてサーキュラーエコノミーの実現につなげていきたいと考えています。
最後に、読者のみなさまへメッセージをお願いします。
「8月8日リユースの日」をきっかけに、多くの企業と共創しながら、リユース行動やリユース業界の印象をよりポジティブなものへと変えていきたいと考えています。そうすることで、多くの方がモノを捨てずに循環させていく社会の形成に繋げていきたいと考えています。
お子さまがいらっしゃる方は、ぜひイベントにも足をお運びいただき、体験を楽しみながらご自宅でできるリユースについてお子さまと話し合っていただけますと幸いです。
そして、リユースの日だけにとどまらず、例えばお引っ越しや衣替え、年末の大掃除など、使わないものを整理するタイミングはたくさんあります。その際、手放し方としてリユースを選択いただけるよう、皆さまの生活の身近な場所へ、リユースサービスを提供してまいります。


