サステナビリティのリーダーに密着!
ビジネスと社会貢献を両立する人と企業の深掘りシリーズ

「捨てるには忍びない。その気持ちごと、次の人へ受け渡せるんです」──そう語るのは、メルカリで公共連携チームのマネージャーを務め、サーキュラーエコノミー・リユースの推進を担う布施健太郎さん。「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」というミッションのもと、リユースの裾野を広げるため、自治体との連携や子どもたちへの教育等に取り組んでいます。その根幹にある想いと、これからの展望を伺いました。

取材・編集:gooddo編集部

あらゆる価値を、循環させる

事業領域でいうと、いわゆるCtoC(個人間取引)のフリマアプリ「メルカリ」が中心です。また、事業者が出品できる「メルカリShops」や海外に販売されていく越境取引の仕組みがあります。

また、キャッシュレス決済の「メルペイ」や暗号資産の「メルコイン」など、あらゆる価値をお金の価値として循環させるフィンテック事業も順調に軌道に乗っています。この日本での事業以外に、アメリカにおいても独自のフリマアプリを展開するメルカリUSの事業があります。
私自身は、公共連携チームのマネージャーとして、リユースやサーキュラーエコノミーを国レベルで推進するため、省庁との窓口を担当しています。それ以外にメルカリのサステナビリティ部門も兼務しています。

新しい製品を一つ生産するには、原材料の調達から製造・輸送まで、さまざまな工程でCO2が排出されます。メルカリで中古品を購入していただくと、その分、本来なら新たに買われていたはずの新品が一つ減る。つまり、新品を生産するときに排出されるはずだったCO2の排出を抑制できる、という考え方です。この「新品の代わりに中古品が購入されることで、どれだけCO2の排出を回避できたか」を定量化したものを「ポジティブインパクト(削減貢献量)」と呼んでいます。メルカリでは、毎年9月にインパクトレポートの中で発表しており、このような動きは国や業界団体や各企業単体でも、取り組みが始まっています。

(お話を伺った、経営戦略室の小林さん(左)、布施さん(真ん中)、藤原さん(右))

「捨てるには忍びない」――物と一緒に、想いを受け渡す

メルカリには「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」というミッションがあります。その原点は、創業者の山田進太郎が世界を一周したときに「地球資源が限られているなかで新興国の全員が先進国と同じように豊かに暮らすことは難しいのではないか」という課題意識 を持ったことです。日本に帰ってきた時、スマ-トフォンが普及し始めており、「スマホを通じて世界中の個人と個人をつなげ、資源を流通させることができたら、新興国の生活水準を少しでも上げられるかもしれない」と考え、持っている人と欲しい人をマッチングするサービスを始めたんです。

自分には不要になったものでも、それを必要とする方が購入する。この積み重ねが「捨てるを減らす」ことにつながり、サーキュラーエコノミーと循環型社会の実現につながっていきます。

そうなんです。物がある人から別の人へ移るというだけなら、単なる売買です。でも、そこにはほかの価値もあると私は思っています。

一つは、先ほどの環境面への貢献です。そしてもう一つが、感情の部分です。すごく大事に使っていたからこそ、捨てるには忍びない。そういう物ってたくさんありますよね。メルカリなら、その人の気持ちや想いも一緒に、次の誰かへ受け渡すことができる。大切に使っていた方ほど、そういうエモーショナルな部分にも価値を感じていただいているのではないかと思います。

リユースを知らない“60%”へ

ちょうどスマートフォンが伸びる時期に、私たちのサービスが世に出た。スマートフォンが普及する時代にあわせて、サービスの提供を始めた。これは大きなタイミングだったと思います。スマホを使う人が増えるほど、私たちのサービスを使ってくれる人も増えていく。その意味で、リユースの裾野を広げる一端を担えたのかなと感じています。

リユース業協会の皆さんとも、「リユースを盛り上げていきましょう」と、仲間として一緒に活動しています。それぞれ業態が少しずつ違いますのでうまく棲み分けをしながら業界全体を伸ばしていこう、と。

実は、世の中でリユースをしている人は、4割くらいなんですよ。中古の物を誰かに譲る、渡す、売る、あげる、いろいろな方法がありますが、それを実践している人が約4割。残りの6割の方は、まだリユースをしていない。ここを広げていきたいと考えています。

「リサイクル」という言葉は多くの人が知っていて、ゴミの分別など、どのような行動がリサイクルにつながるかも想起できます。でも、「リユース」についてはまだ言葉を知っていても、なかなか行動に結びついて行かない。リサイクルと比べてまだまだ広げる余地がありますし、広げていかなければならないと思っています。

そのためには、いろいろな要素が必要で、「もったいない」「環境にいい」「想いが受け継がれる」といった要素も大事ですが、「楽しい」「自分にとって価値がある」と思ってもらえることも、すごく重要だと考えています。

ゴミ箱が一番の競合

アプリをどう使いやすくしていくかには、かなり力を入れています。どうすれば出品がスムーズにできるのか、どうすればほしい商品がすぐに見つかるか、そのユーザー体験を改善し続けることを、とても大切にしています。

日本事業の責任者がよく言うのが、「ゴミ箱が一番の競合」という言葉です。ゴミ箱に捨ててしまうよりも、もっと簡単に、もっと価値を持って取引ができる。そういう場をつくっていくことが、何より重要だと考えています。

そうですね。ミッションをブレイクダウンしていくと、そこに行き着くという形です。「あらゆる価値を循環させる」わけですから、対象はリユースだけではありません。金融も、人の時間も、あらゆるものが対象です。だからこそ、時に突飛に思えるような新しい挑戦も生まれてくるんです。

「リユースってこんなに簡単なんだ」──子どもたちが出会うリユースの入り口

メルカリを実際に使ってくださるのは、ほとんどが大人の方です。それでも、小さい頃の多感な時期からリユースを知っていただくことが、長期的にはリユースの拡大につながっていくと考えています。長い目で見た、いわば10年計画のような取り組みですね。

いま弊社で作っている教材は大きく2つあります。
小学校中学年(3〜4年生)以上を対象とした「メルカリかんさつ帳」これは不要になったモノがいくらくらいで売られているかをかんさつすることを通じてモノやお金の価値について学ぶことができるワークブックです。

もう一つは「リユース探検隊」「リユースとは何か」を、メルカリという枠を超えてより広く扱った教材です。
このリユース探検隊は、環境省の「デコ活」といった政策目標とも歩調を合わせながら、楽しくメルカリをテーマにしながら学べるように設計しています。どちらもWebからダウンロードでき、学校の授業や家庭での自由研究など、さまざまな形で活用いただいています。

※ メルカリの教育ポータルサイト

mercari education :https://education.mercari.com/

「メルカリをリユースの視点で考えていなかったので、改めて認識しました」という声をよくいただきます。メルカリというサービスは知っていても、それがリユースなのだ、地球や環境にとってプラスなのだ、という認識はまだ広がっていない。教材のタイトルがまさに「リユース探検隊」ですので、そこで気づいていただくことが、とても大事だと感じています。

ほかにも、「画像検索の機能を知らなかった。子どもと一緒に出品してみます」という声や、「意外な物に価値がつくんですね」という驚きの声もいただきます。

そうなんです。親子で一緒にアプリやウェブサイトを参照して、「あ、これ5,000円くらいするんだ」「じゃあこれ売れるね」と会話が生まれる。思いがけない物に値段がつくと、みんな驚きます。

子どもたちに「これまでどんなリユースをしている?」と聞くと、「お兄ちゃんが着ていた服を弟が着ている」と教えてくれる。人から人へ物が移っていく経験は、すでに身近にあるんですね。その延長で、「使い終わったら、また別の人へ回していけるね」と伝えられる。「物を大事にしようね」という言葉ではなかなか伝わらないことが、「価値になるんだ」という実感を通じて、無意識に伝わっていく。楽しさと学びを、きちんと両立しながら体験する機会を提供していきたいと考えています。

マンホールも循環する――自治体との連携

自治体がメルカリに物を出品し、それを一般のお客さまが購入する、という取引が今どんどん増えています。

わかりやすいのは、学校の備品です。少子化で学校の統廃合が進んでおり、人体模型のような備品がたくさん余ってしまう。そういった物が出品されています。最近では、下水道事業で定期的に入れ替わるマンホールを出品した自治体もありました。値付けは自治体さんにお任せしていますが、思わぬ物が売れることもあります。

これまで役所で役目を終えた備品は、廃棄にお金がかかっていました。それが、多少なりとも収益に変わる。環境にもよく、自治体の財政にもプラスになる取り組みです。

環境省が今年3月に「リユース等の促進に関するロードマップ」を策定しました。その中において、リユースの裾野の拡大のために「リユース業者等と協働取組を行う自治体数」を現在の300から600に増加させるという目標があります。民間事業者と協働して市民がリユースをしやすい施策をしてくださいということですが、メルカリの場合は、自治体自身がリユースをすることで市民への啓発につながる、というアプローチで自治体にご協力いただいています。

次に力を入れたいのが、衣類です。衣類は製造時の環境負荷が高く、国も家庭から廃棄される衣類の量の30%削減(2020年度比)を目指して「サステナブルファッションの推進に向けたアクションプラン」を同じく今年3月に策定しました。すでに衣類リユースに取り組んでいる自治体もありますが、可燃ごみにするのではなく衣類を分別して回収するにはコストがかかります。そこを民間の力でもっと経済的に回していけないか検討が必要であり、 そもそも可燃ごみに出す前に市民の方々にリユースしてもらう「意識の醸成」と、実際に回収された物をどうリユースしていくかという「回収後の仕組みづくり」について考えたいと思います。

循環を「見える化」する

「グリーンフライデー」という取り組みを、毎年11月の最終週に開催しています。ブラックフライデーが消費喚起のイベントであるのに対して、グリーンフライデーでは、お客さまが不要になった衣類を持参し、欲しいものと交換できる物々交換ブースや、リユースアイテムの販売ブース、まだ着用できる服のお直し相談ブース等を設置し、サステナブルファッションの楽しみ方を提案しています。
メルカリが中心となり、アパレル関連企業を中心としたパートナー企業を迎え、一緒に開催しています。

昨年は、高輪の会場で開催しましたが、古着の物々交換は、1つ持ってくると1つ持って帰れる仕組みで、900名以上の方にご参加いただき、あっという間に品物がなくなる盛況でした。

また、各ブースでのリユース活動を通じて削減されたCO2相当量を約9mの大型デジタルサイネージにリアルタイムで掲示します。

メルカリにはR&D(研究開発)という研究機関があり、そこで専門の研究者が算定ロジックをつくり、サステナビリティチームと共同で算定しています。カテゴリーごとに算出していて、たとえばTシャツとジャケットでは環境負荷が異なりますから、分けて計算しています。
中古品が新品の代替として利用されることを前提として、「新品を購入した場合(①)」と「メルカリで中古品を購入した場合(②)」の2つのシナリオにおけるGHG排出量を比較し、その差分を「削減貢献量」と定義しました。また、メルカリで購入した中古品1個が、必ずしも新品1個分の代替になるとは限らないため、「置き換え率(displacement rate)」の概念を取り入れています。

こうした成果は、年に一度「インパクトレポート」としてまとめています。

今後は、リユースによる環境貢献をよりわかりやすく伝えていきたいと思います。その一つが、環境貢献量の『見える化』です。レポートだけではなく、「メルカリ」を利用いただいているお客様にも自分の取引がどれほど環境に貢献できたか実感いただける仕組みを考えていきたいと思います。

また、親子で楽しくリユースを体験できる場を通じて、環境の大切さを次世代へとつないでいく取り組みも、変わらず大切にしていきたいと思います。

Profile

株式会社メルカリ

経営戦略室 政策企画マネージャー

布施 健太郎(Kentaro Fuse)

2019年4月にメルカリ入社。政府系キャッシュレス事業、メルカリShops、メルカリハロなどを担当し、現在は政策企画チームでサーキュラーエコノミー・リユースの推進を担当し、サステナビリティ部門も兼務。