

サステナビリティのリーダーに密着!
ビジネスと社会貢献を両立する人と企業の深掘りシリーズ
「あなたたちは、お嫁さん候補です。ぜひ社内結婚してください」
社会人のスタートで、そう告げられた小泉美礼さん。前例のない道を切りひらきながら企業でキャリアを重ね、いまは国際NGOプラン・インターナショナル・ジャパンのCMOとして、女の子の権利向上に取り組んでいます。
ともに企業連携を担う松本幸さんもまた、夫の海外赴任に伴うキャリアの中断を経験しながら、「自分で選べること」の大切さを実感してきました。
「女性だから」と、誰もあきらめなくていい社会へ。お二人に、これまでの歩みと、企業とともに描く女の子の未来について伺いました。
取材・編集:gooddo編集部
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"女性は腰かけでしょ"――内定式の一言から始まった、小泉さんのキャリア
まず、小泉さんがプラン・インターナショナルで働くことになった経緯を教えてください。
小泉さん:私は大学を卒業してからずっと、日本企業や外資系企業でマーケティングや新規事業を担当してきました。管理職としては30年ほど、ブランディングや「どうすれば新しい事業がうまくいくか」を考え続けてきました。
プランに入った理由は、女性のエンパワーメント(一人ひとりが本来の力を発揮できるよう後押しすること)に強く惹かれたからです。
私が社会人になったのは男女雇用機会均等法の後ですが、それでも「女性は結婚したら辞めるんでしょ」「腰かけでしょ」と当たり前のように言われた世代でした。内定式で「あなたたちはお嫁さん候補です。ぜひ社内結婚してください。その方が会社のためになります」と言われて、本当にびっくりして。そんなスタートだったんです。
もっと活躍できる場所を求めたら、当時は外資系しかありませんでした。女性第1号のマネージャー、第1号のママさん事業部長……前例のないことばかりで、男性なら苦労しないことを苦労しながら歩いてきた。
だからこそ、次の世代には同じ苦労をしてほしくない。「女性だから」「男性だから」ではなく「自分だから、これをやる」と言える世の中になってほしい。それを事業として推しているのがプランだったので、「社会人人生の最後に、ここに取り組みたい」と思って入りました。
もともと「女性活躍」に強い関心があったのでしょうか。
小泉さん:実は、幼稚園から大学までずっと女子校だったんです。社会人になって初めて、男性と席を並べました。それまでは「これは男性だから」「これは女性だから」という経験を一切してこなかった。電球も自分で取り替えるし、重い荷物も自分で持つ。何でも自分でやるのが当然でした。
その世界から、いきなり「お嫁さん候補です」という社会に出てきたときの驚きは、本当に大きかった。「おかしいな、おかしいな」と思いながら今まで生きてきた、というのが背景にありますね。

海外赴任で、キャリアが途切れた――松本さんが見つけた"自分で選べる"尊さ"
松本さんも、企業のご出身なんですよね。
松本さん:はい。新卒でベンチャーのIT企業に入って、ずっとWebの仕事をしていました。でも、夫の海外赴任が決まって一度専業主婦になって。戻ってからはフリーランスで働き、また2回目の海外赴任があって、4年間専業主婦をして……というのを繰り返していました。帰国して仕事を探したときに、プランから採用されたんです。
実は、高校生の頃からずっと「人道支援やNGOで働きたい」という想いがありました。ただ、NGOは狭き門ですし、知識も経験もないまま飛び込むのもどうかなと思って。まずは民間でスキルを磨いてから、と考えていたんです。
海外赴任でキャリアが途切れるというのは、大きな経験だったのではないですか。
松本さん:そうなんです。夫の駐在に帯同することは自分で選んだことではありますが、正社員を10年くらい続けてきたものが、ある日ぷつっと途切れる。すごく不安で、一瞬「自分は何者なんだろう」という気持ちになりました。
でも、その後フリーランスとして働いたときに、「自分で仕事を選べる」のは、すごく大事なことだなと気づいたんです。家族がいると、自分の思い通りにいかないこともあります。それでも、自分で「この仕事をしたい」と選べるのは、本当に幸せなことだなと。
だから、若いうちに学んで、手を動かしてスキルを積んでおくことが大切だと、身をもって思いました。プランが大事にしているのも、女の子の教育そのものだけでなく、「女の子が自分で自分のことを決められる」こと。その考え方に、すごく共感しました。
前例がないなら、つくればいい――二人が歩いた、働く女性の道のり
お二人がいま企業とプランをつなぐ仕事に力を注ぐ原点には、ご自身が会社員として働く中で重ねてきた経験があると伺いました。
まず小泉さん、会社員時代に「大変だった」と思い返すことはありますか。
小泉さん:私はマーケティングと営業の責任者だったのですが、営業に行くと「お嬢ちゃん、男性を連れてきてくれ」と何度も言われました。こちらは「私が責任者です」と言っているのに、です。
そのときの上司は、アフリカ系アメリカ人の方でした。ご自身もマイノリティとして差別を経験してきた人だったので、この話をすると、ものすごく怒ってくれて。「じゃあ俺が営業に行ったら、肌の色が違うから別の人を連れてこい、と言われるのか」そう言って、一緒に憤ってくれたんです。
つらい経験だったと思いますが、逆に「良かった」と思えることはありますか。
小泉さん:私はかなり負けず嫌いなので、困難があるほど燃えるタイプなんです。前例がない状況に置かれることが多いため、ゼロから考える癖がついた。それが結果的に、イノベーションにつながりました。
たとえば、以前たばこ会社のブランドマネージャーだった時、「女性向けのタバコをつくってはいけない」というタブーのような空気がありました。でも、女性の視点を取り入れて開発したことで、ヒットに繋がりました。前例があるかどうかは関係なくて、いいもので、ターゲットが求めているものをつくり結果を出せばよい。ただし、結果を出さないといけなかったので必死でしたが。
松本さんは、子育てと仕事の両立で苦労された経験があると伺いました。
松本さん:うちは夫が料理や掃除が苦手な人なんです。だから家事もほとんど自分でやるしかなくて。子どもの発熱で保育園から呼び出された時にも、いつも私がお迎えに行っていました。
育休復帰後は時短勤務でした。会社は配慮してくれているのでありがたいのですが、責任のあまりない仕事しか任せてもらえないので、自分の成長には全然つながらないし、お給料も据え置きと言われてしまう。モチベーションがすごく落ちて……。いわゆる「マミートラック(出産を機にキャリアが停滞してしまうこと)」ですね。
小泉さんも、同じような時期があったのでしょうか。
小泉さん:本当に、当初はまわりの協力は得られませんでした。週に1回、仕事帰りに本屋さんで本を選ぶ、それすらできなかった。仕事が終わったら、その足で保育園に迎えに行って、そのまま寝るまで自分の時間が一つも取れない。ノープランでふらっとどこかに寄るとか、化粧品を見たり、口紅を選んでみたり。そういう時間が、まったく取れなかったんです。
妊娠初期には切迫流産になって、駅前で倒れて救急車で運ばれたこともありました。会社から「無理にでも休め」と言われて、戻ってきたら自分の部署ごとなくなっていた、ということもありましたね。実家にも、ずいぶん頼りました。
だからこそ、自分が上司になってからは、絶対に同じことはさせないと決めていました。ママさんのマネジメントは、大変な部分もありました。時短ですから、同じ頭数でも時間の制約はありますが、成果は求められる。でも、そこはチームでカバーすればいい。
私が見てきた中では、出産や育児をきっかけに仕事への向き合い方が変わる人は多いですね。限られた時間をどう使うかを真剣に考えるようになったり、物事の優先順位が明確になったりする。以前とは違う強さや落ち着きが感じられることもあります。
だから、お母さんになったからといって働く機会を狭めるのではなく、きちんとチャンスを提供することが大切だと思っています。そうすれば、しっかり成果を出してくれる人はたくさんいます。
それを事例として示しながら、社内の認識を少しずつ変えてきました。結果を出せば、会社は動く。「女性だから」という話だけではなくて、前例のないことに挑むときは、企業はどうしても怖い。その怖さをどう乗り越え、どう証明していくか。本質はそこなんだと思います。
日本の女の子の"自己肯定感"に向き合う――「じぶんらしさ研究所」という挑戦

お二人が取り組んでいる「国際ガールズ・デー」のイベントについて教えてください。
松本さん:「国際ガールズ・デー」は、毎年10月11日。女の子の権利やエンパワーメントを国際社会に呼びかける日として、プラン・インターナショナルの働きかけで国連が定めた日です。
私たちはこの日に合わせて、毎年テーマを変えながら「PLAN GIRLS MOVEMENT」というイベントを開催しています。2026年のテーマは「じぶんらしさ研究所」。女の子が安心して"自分らしさ"を見つけていける場にしたいと思っています。
この企画の起点には、日本の女の子が抱える課題があるそうですね。
松本さん:根底にあるのは、女の子の自己肯定感の低さだと感じています。日本人の自己肯定感は世界と比べても低いと言われますが、なかでも男の子より女の子の方が低い。「自分なんて」と思ってしまう子が、特定の家庭環境の子だけでなく、全体的に多いように見えます。
一方で、自己表現できる人に憧れたり、安全に「自分らしさ」を表現したいという思いをもつ人も多いと思います。
プランというと「世界の女の子」のイメージが強いですが、あえて「日本の女の子」に向き合っているんですね。
小泉さん:この取り組みは、3年前から始めました。これまで海外の児童婚や女性性器切除(FGM)といった課題を伝えてきましたが、海外の話だと「遠い国のこと」になってしまう。
日本だって、私もそうでしたが、ジェンダーバイアスという課題があります。「女の子だから」と代々言われてきたように、チャンスを与えられず、「自分はリーダーになっちゃいけない」「前に出ちゃいけない」と思い込んでしまう傾向が、まだまだあります。
でも、リサーチをして分かったのは、そういう子も、例えば学校で「クラス委員になってごらん」と背中を押されて場を与えられると、立派なリーダーになっていく、ということ。だったら、その機会をどんどん与えましょう、と。
国際ガールズ・デーに合わせた「ガールズ・ムーブメント」では、女の子が一歩でも前に出られる機会を、毎年テーマを変えてつくっています。今年のテーマである「じぶんらしさ」も、その考えから生まれました。
「みんなと違うと仲間外れになるから」と自分を抑えてしまう子に、「自分のやりたいことをしていいんだよ」と伝えたい。「仮説を立てて、研究して、発表する」という形にしたのも、女の子自身が安心して"自分らしさ"を見つけていけるようにするためです。テーマそのものが要らなくなる世の中になればいいな、と思いながらやっています。


社会貢献は「コスト」ではなく、企業価値になる
企業を巻き込むのは、なぜでしょうか。
小泉さん:私が企業出身で、ずっとブランディングをやってきたからかもしれません。今、社会貢献やCSR(企業の社会的責任)がすごく必要とされていますが、企業側は「どうしたらいいか分からない」。自分たちだけでやろうとしても、うまくいかない。それを企業側の立場で見てきました。
たとえばユニクロさんが、Tシャツの売上の一部を私たちに寄付してくださって、それで現地の子どもたちを支援する、というプロジェクトがあります。企業は「こういう取り組みで社会貢献しています」と発信でき、買い物に来た人は世界の現状を知ることができ、さらに商品を通して社会貢献に参加できる。結果として救われる子どもが増える。まさに三方よしです。
また、他の企業では、現地視察をされた皆さんが、自分たちの支援金がどのような結果になっているのかを体感され、エンパワーされて帰国される。視察がものすごく高いモチベーションとなり「社員全員に伝えたい」となる。 社会貢献はコストではなくこういった効果があるのです。

"同志"として、一緒に考えたい――6/19ウェビナーに込めた想い
この秋の「PLAN GIRLS MOVEMENT」に先がけて、6月19日には、特別講演付きウェビナーが開催されます。どんな方に来てほしいですか。
小泉さん:ブランド、社会貢献、D&I、サステナビリティのご担当者に、ぜひいらしていただきたいです。
「自分はこうしたいのに、上にどう話せばいいか分からない」
「何かを成し遂げたいけれど、アイデアがない」
「社会貢献を企業価値につなげたいが、何から始めればいいか分からない」
そんな課題感を持つ方が多いはずです。その方たちが前に進むためのヒントを、少しでもお渡しできればいい。そして「相談してみたい」と思ってもらえたら一番嬉しいですね。会社規模の大小は関係ありません。世の中をよくしたいという課題を持っている時点で、私たちは同じ「同志」だと思っています。
松本さん:「どうしたらいいか分からない」と迷っていらっしゃる企業の方は、本当に多いと思います。そこを気軽に聞きに来てほしい。そのうえで、こちらもしっかりお話を伺って、ご提案できる。ちょっとでも興味があれば、ぜひいらしてください。
企業の場合、社内だけで考えると、かえって難しくなることもありそうですね。
小泉さん:一般の個人の方と違って、企業には企業の事情があります。担当者の事情、部門の事情……それが複雑に絡み合うので、社内で考えていると分からなくなってしまう。だからこそ、第三者に相談するのが一番いいんです。私はコンサルティングの出身でもあるので(笑)、ぜひ気軽に声をかけていただけたら、と思っています。
※本ウェビナーは終了いたしました※






