サステナビリティのリーダーに密着!
ビジネスと社会貢献を両立する人と企業の深掘りシリーズ

企業とNPOとの「共創」。その言葉を目にする機会は増えても、実際に何から始めればいいか、これが本当に意味のある関わり方なのか。手ごたえをつかみきれている担当者は、まだ多くないのではないでしょうか。

そんな問いに正面から向き合い続けてきたのが、協働・共創の研究者である清水潤子さんです。
病院のソーシャルワーカーとしてキャリアをスタートし、海外大学院での修士課程、米国の移民・難民支援NPOやコミュニティ財団での実務、日本ファンドレイジング協会(非営利組織の資金調達支援を行う団体)を経て、現在は大学の社会福祉学科で教壇に立ちます。営利・非営利の枠を超え、多角的な視点から社会課題の現場を歩み続けてきたスペシャリストです。

だからこそ、企業が社会と向き合うとはどういうことかを、外から鮮やかに照らし出す視点があります。「企業はもともと、社会のためにあったはずなんです」と清水さんは言います。行き過ぎた資本主義の中で薄れてしまったその原点に立ち返ること。それが、NPOとの「共創」へ踏み出す本当のスタートラインになる、と。

今回は、協働・共創研究の専門家として、そして認定NPO法人キッズドア(子どもたちの学習支援・居場所づくりに取り組む団体)とともに開催するセミナーの登壇者として、清水さんにお話を伺いました。

取材・編集:gooddo編集部

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「企業×NPOの共創で広がる企業価値とインパクト」


6月5日開催のイベントでは、本記事に登場した

清水潤子先生が登壇し、


「共創とは何か」という

考え方から、実務にどう落とし込むかまで

解説します。

【こんな方におすすめ】
✓ CSR・サステナビリティの取り組みの方向性に

悩んでいる
✓ 「共創」と言われても、具体的なイメージが

持てない
✓ 事例だけでなく、考え方から理解したい

【セミナー概要】
日時:2026年6月5日(金) 14:00〜16:30
会場:セプテーニグループ セミナールーム

(新宿グランドタワー 27F)
対象:CSR・サステナビリティ担当者、

広報、経営企画の方

“なんとなく取り組む”から一歩進み、

“なぜ・どうやるのか”を整理したい方は、
ぜひご参加ください。

地域の福祉から、大学の研究室へ──"社会課題の現場"を渡り歩いたキャリア

もともとは医療機関で相談員(ソーシャルワーカー)として働いていました。病院にはけがや病気を機に、さまざまな困難に直面する方々が来られるんですが、「こんな大変な状況になる前に地域で支えることはできなかったのだろうか」という問題意識を持つようになったんです。

そこから地域福祉やコミュニティ開発に関心を持ち、もっと学びたいと考えて、留学しました。その後は移民・難民支援のNPOやコミュニティ財団での勤務を経て、帰国してから日本ファンドレイジング協会へ。そこでは非営利組織の資金循環や社会的インパクト評価をテーマに仕事をして、2021年から今の大学に移りました。

専門は「協働・共創が進むための仕組み」で、評価や、中間支援組織(NPOや企業など異なるセクターをつなぐ調整役の組織)、協働を進めていく人材(ソーシャルワーカーやコーディネーターといった方々)に関心を持って研究しています。これだけ企業に触れないでキャリアを歩んできた研究者も珍しいかもしれませんが(笑)、病院、海外のNPO、財団、中間支援、大学と来ているので、それが今の視点につながっています。

アメリカに留学していたときまで遡るんです。当時、「コレクティブインパクト(Collective Impact)」という考え方がアメリカで盛んに議論されていました。詳しくは後ほどお話ししますが、異なるセクターが同じ課題に向けて協力し合う手法のことです。
日本のソーシャルセクターの先鋒の方たちがボストンで開かれたカンファレンスに来ていたんです。そのときにキッズドアの松見さんとたまたまお会いしたのが、最初のご縁でした。

今回のセミナーへの登壇については、キッズドアの担当者よりお声がけをいただいて。
前回のセミナーで参加者から「事例だけじゃなく、そもそも共創とは何かを専門的に聞きたい」という声が多かったとのことで、それなら私にも話せることがあるかなと思いました。

企業の外にずっといた立場だからこそ語れる、企業への期待と問い。そういう観点の話ができればと思っています。

「なぜ我が社は存在するのか」──そこが共創のスタートライン

企業の社会貢献は「古くて新しい問い」だと思っています。というのも、本来企業には「何のために存在するのか」という理念や使命があるはずだからです。

企業にはもともと「社是」があるじゃないですか。創業者が「自分たちの会社は何のために存在しているのか」を言葉にしたもの。「サステナビリティ」や「SDGs」という言葉が生まれるずっと前から、「便利な商品を通じて生活を豊かにしたい」「このサービスで社会をよくしたい」という想いはすでにあったはずなんですよね。

でも、そこが行き過ぎた資本主義や経済至上主義の中で、だんだん薄れてしまった部分がある。PDCAを回し続けても、社会は良くならないし格差は縮まらない。そんな中でSDGsという国際的な枠組みが出てきて、すべてのプレーヤーがコミットメントを果たさないとどうにもならないという「外堀を埋められてきた感」はあると思うんですよね。

だからこそ、「自分たちの会社はなぜ存在するのか」という問いに立ち返ることが、共創のスタートラインになる。そこが揺らいでいると、社会貢献の取り組みも「やらされ仕事」になってしまいます。

重なりますね。伝統ある企業が時代に合わせてパーパスを見直す動きもあるし、性的マイノリティの雇用や女性管理職の増加といった社会課題も、突き詰めると自社のガバナンス構造に立ち返ってくる話でもある。男性の育児休業、産休・育休後の女性がいかに戻りやすいか。これは社会の問題であると同時に、企業の足元で起きていることでもあります。

企業は社会と切り離された存在ではありません。従業員の生活、地域との関係性、すべてがつながっています。社会貢献というと「外に目線が向くもの」というイメージが強いかもしれませんが、すべて企業の内部と社会課題が重なっている領域です。

つまり、社会課題への取り組みは「外向きの活動」ではなく、自分たちの足元にある問題と地続きなんです。

ESG投資(環境・社会・ガバナンスを重視した投資)への関心は格段に高まっていますし、SNSやメディアの影響で、ガバナンスの問題がブランドイメージに直結するようになりました。私は大学で学生と日々接していますが、彼らが就職先を選ぶとき、その会社の社会への向き合い方をちゃんと見ているなと感じる場面がとても多いんですよね。

良い人材をいかに集め、いかに大切にするか。それは表面上の「働きやすさ」だけじゃなく、従業員を本質的にどう大事にするかというガバナンスの話にもつながっています。

「プロジェクトを一緒にやること」が、共創じゃない

プロジェクトを一緒にやること、ではないんですよね。

私の中での共創のイメージは、「コレクティブインパクト(Collective Impact)」という考え方に近いんです。アメリカ発の概念で、異なるセクター(企業、NPO、行政、地域など)がそれぞれの持ち味・強みを活かしながら、同じ社会課題の解決に向けてコミットメントを共に果たしていくアプローチです。

「何をやるか」を一緒に決めるんじゃなくて、「何を解決するか」「何をより良くしていくか」、そこに同じ眼差しを向けて動いていくこと──それが共創だと思っています。

例えば、シングルマザー世帯のウェルビーイングを高めたいとなったとき、キッズドアさんのような子どもを支援するNPOは子どもへのサポートに関わる。企業であれば、お母さんたちのスキルアップを支援したり、働きやすい時間設計の雇用機会をつくったりすることが、一つのコミットメントの形になるかもしれない。

役割は異なっていても、同じ方向を向いている状態。それが共創だと考えています。

コミットメントを課題解決に向けてどれだけ果たすか、そしてそれをどう測りモニタリングするかというところで、だいぶ変わってきます。表面的な活動報告で終わるのか、本当に課題を解決できているのかを問い続けるのか。そこが共創かどうかの分かれ目だと思っています。

「インパクトレポート」と書いてあるのに、実績報告になっているな、と感じることが結構あって。本来は、何人のお子さんが就学につながったか、何人のお母さんの暮らしが良くなったかが言えることがインパクトだと思うんですよね。そこまでコミットして結果を示せる企業さんって、まだそんなに多くない。難しいことは確かですが、そこが共創の本質だと思います。

その考え方を取り入れた取り組みは増えていますが、変化が起きていくには時間がかかります。3年、5年とモニタリングできる事業がまだ少なくて、本当に結果が出ているのかを追いにくい状況が続いています。

コレクティブインパクトの大きな特徴の一つは、「一定の地域を対象にする」こと。
ニューヨークのこの地区のこの子たちを対象に、というように絞ることで初めてコミットメントの設計ができます。全国に面的に展開するよりも、地域コミュニティや地場産業との取り組みの方が向いているケースが多い。全国に拠点を持つ企業なら、特定エリアの拠点に絞ってやるという関わり方もあると思います。

大きく1回より、小さく長く──現場から見た「リアルな共創」の進め方

大きなインパクトを一発出したい、という気持ちはすごくわかるんです。でもNPO側の立場から言うと、大きいものを1回よりも、小さいものを長く続ける方がずっといい。

今課題になっているものって、そんなに簡単には解決しないんですよ。二団体が頑張ったからといって子どもの貧困がゼロになるなら、誰も苦労していないので(笑)。だから小さなスコープから始めて、一緒に「学習のループ」を回しながら少しずつ広げていく方がいい。やってみてどうだったか、これはいけそうだ、じゃあ次は範囲を広げようか、という間に新しいプレーヤーが加わってくる。その積み重ねが、結果的に大きな変化につながっていきます。

先行研究を見ると、コンソーシアム(共同体)としての関係性を築くだけで最初の1〜3年はかかると言われているんですよね。お互いが何を得意とし、何を担えるかを理解してからでないと、「ではここは自分たちが担う」という分担が決まらないので。日本だと、そのフェーズを作り上げたところで資金提供が終わってしまうことが多くて、それはもどかしいなと感じます。

価値基準が異なるのも難しいところです。企業はビジネスとしての成果を求めるし、NPOは課題解決の専門性で動いている。でも、お互いが「より良い社会にしたい」という思いは、根本のところで必ず重なります。それを大切にしながら継続していく中でしか、本当の共創は生まれないと思っています。

「依頼する・される」の関係を超えたところに、共創がある

寄付や資金支援から始めること自体は、全然いいと思っています。むしろすごく大事。
ただ、NPO側がお返しとして「経験・体験を共有すること」を意識的にやっていかないと、お金が渡っただけの関係になってしまう。

キッズドアさんのような団体が支援している子どもたちは、経済的に困難な状況にある子どもたちです。でもそれは、もしかしたら自分の子どものクラスメートのことかもしれないし、隣近所の子の話かもしれない。そこで初めて「自分ごと」になる。だから意図的に、受益者の声を一緒に聞いてもらう機会や、現場に足を運んでもらう機会をつくっていくことが大切なんです。

アメリカで関わっていた財団に、印象的な取り組みがありました。資金提供の意思決定を行う理事会(ボード)のメンバーはみな富裕層なんですが、支援しているプログラムの受益者は社会的に困難な状況にいる人たち。そのギャップをどうにかしようと、理事会を地元のパブリックスクールで開くようにしたんです。子どもたちの暮らしぶりや、そこで飛び交う言葉を肌で感じることで、意思決定が変わっていく。企業でも同じことが起きると思っています。

最初は寄付や物資提供でもいいと思います。ただし、それを単発で終わらせないことが重要です。その取り組みを、自社のミッションやパーパスと結びつけて説明できるようになると、継続しやすくなります。

「依頼する・される」という関係を超えないと、共創にはならない。そのために大切なのは、企業側が「これは自分たちのパーパスの一環だ」「社是の中にこの取り組みが位置づいている」と説明できるようになることだと思っています。

依頼されたからやるのではなく、自分たちがこうありたいというパーパスの中に、NPOとの協働が位置づいている。そう説明できるようになると、「会計年度が終わったから終わり」というものにならないじゃないですか。

まずは小さな寄付や資金提供から始めて、現場の経験・体験を通じて少しずつ関係を深め、やがて共創へと近づいていく。そういう「ラダー(はしご)」があると思っています。
最初の一段目は何でもいい。大事なのは、その先にどんな関係を築いていくかをイメージしておくことです。

「これでいいんだ」と思って帰ってほしい

「これでいいんだ」と、セミナーに来てくださった方に感じながら帰っていただけたら嬉しいです。

担当になったけれど何から始めればいいかわからない、なんとなくやってはいるけど手ごたえがない。そういう悩みを抱えている方はきっと多いと思います。でも、それはむしろ社会課題と真剣に向き合っている証拠だと思うんですよね。複雑な課題は、簡単には解決しない。迷いながらでも向き合い続けることが、すでに一歩です。

どんなアプローチの選択肢があるか、どこから始めてみてもいいか。そういう話を通じて、「前に進んでいいんだ」と思って帰っていただけたら。

そして、もし少しでも気になった方は、ぜひ現場に足を運んでみてほしいんです。キッズドアさんの活動の場に行ってみる。子どもたちが発表する場に行ってみる。それだけでいい。

その先は、ゆっくりラダーを登っていけばいい。大きく一発でやろうとしなくていい。
小さく、長く、一緒に関係性を築きながら取り組み続けることが、結果的にはいちばん大きな共創につながっていくと思っています。

参加受付中】 企業向けセミナー
「企業×NPOの共創で広がる企業価値とインパクト」


6月5日開催のイベントでは、本記事に登場した

清水潤子先生が登壇し、


「共創とは何か」という

考え方から、実務にどう落とし込むかまで

解説します。

【こんな方におすすめ】
✓ CSR・サステナビリティの取り組みの方向性に

悩んでいる
✓ 「共創」と言われても、具体的なイメージが

持てない
✓ 事例だけでなく、考え方から理解したい

【セミナー概要】
日時:2026年6月5日(金) 14:00〜16:30
会場:セプテーニグループ セミナールーム

(新宿グランドタワー 27F)
対象:CSR・サステナビリティ担当者、

広報、経営企画の方

“なんとなく取り組む”から一歩進み、

“なぜ・どうやるのか”を整理したい方は、
ぜひご参加ください。

Profile

武蔵野大学

社会福祉学科

講師

清水 潤子(しみず じゅんこ)

病院のソーシャルワーカーとしてキャリアをスタート。地域福祉への問題意識から海外の大学院で修士号を取得し、難民支援を行うNPOでの実務経験を経て帰国。
日本ファンドレイジング協会では非営利組織の資金循環・インパクト評価を担い、2021年より現職。専門は「協働・共創が進むための仕組み」。評価、中間支援組織、ソーシャルワーカー・コーディネーターなど協働推進人材を研究テーマとする。
認定NPO法人キッズドアとの共催セミナーに登壇予定。