サステナビリティのリーダーに密着!
ビジネスと社会貢献を両立する人と企業の深掘りシリーズ

「前の持ち主が大切に使っていたものを、しっかりまた次の持ち主につないでいく。それが私たちの使命です」──そう語るのは、カメラのキタムラでリユース事業を率いる平賀さん。
1934年の創業以来、92年にわたって写真とともに歩んできた同社は、年間75万点もの中古カメラを買い取り、整備し、また誰かの手元へと送り出しています。中古カメラの買取・販売にとどまらず、地域のリユース拠点づくりや、若い世代へ写真の楽しさを伝える取り組みまで。その想いと展望を伺いました。

取材・編集:gooddo編集部

カメラと、フォトライフ。2つの柱で写真と暮らしを支える

私たちは「カメラ&リユース」「フォトライフサービス」という、大きく2つの領域で事業をしています。

新品・中古のカメラやレンズ、周辺機器をメーカー横断で扱うカメラ専門店として、全国に店舗を展開しながらEC販売も行っています。
カメラやブランド時計の買取を、店舗・ネット・郵送・出張買取という形で受けています。ボリュームとしてはカメラが一番大きいですね。中古カメラ市場そのものは、リユース全体の中でそれほど規模が大きいわけではないのですが、その中で当社は実店舗としてはおそらく一番だと思います。

もう一つのフォトライフサービスでは、写真プリントやフォトブック、年賀状印刷、カメラの修理・メンテナンス、スマートフォンの販売やスマホ教室なども手がけています。子ども写真スタジオの「スタジオマリオ」は30年以上続けていて、当時撮影したお子さまが今度はご自身のお子さまを連れて来てくださる、ということも起きています。最近はセルフ写真館も増やしているところです。写真を撮る機材を売るだけでなく、撮った写真を形にし、思い出を残すお手伝いをする。そこまでが私たちの仕事だと思っています。

買取した商品は、メンテナンスをしたうえで販売しています。ボリューム感でいうと、全国970店舗、年間のカメラ・レンズ・写真機材の取扱は75万点ほどあります。

中古品は本来、そのお店に行かないと現物を見られないですよね。でも当社の場合は、買い取った中古品をECサイトに掲載して、「近くの店舗で受け取りたい」という方が、実際に状態を確かめてから購入を決められるんです。中古品は一点ごとに程度が違いますから、ここが他社さんと一番違うところかもしれません。地方の小さな店舗で買い取られたカメラが、全国のカメラ愛好家のもとへ届く。もちろんご自宅への直送もありますが、8割強は店舗での受け取りです。

92年つないできた、「カメラを継ぐ」という創業の想い

「良いカメラを、より多くの人へ届けたい」という想いです。カメラはかつて、一部の専門家や富裕層にしか手の届かない高価な道具でした。それを多くの人の手に届ける手段として、中古カメラの流通という事業が生まれました。カメラは使われてこそ輝く。良い道具を「次の人へ届ける」ことが、我々の使命だと心得ています。

その想いを象徴する出来事が、つい先日ありました。ある店舗に、Mamiya 6(マミヤシックス)という中判カメラが持ち込まれたんです。保証書に「昭和31年9月」と書かれた、今からちょうど70年前のカメラでした。そこには私たちの当時の屋号である「北村商会」と書かれていました。70年前に当社で買われたカメラが、おそらく代替わりしながら家宝のように受け継がれて、保証書まで大切に残されて、また当社に戻ってきたんです。普通は保証期限が切れたら捨ててしまいますから、これは奇跡のようなことだと思います。

はい、社内でも驚きました。カメラを1台売るときは、「新しい商品が出ましたよ」とどんどん買い替えていただくのが、商売としては普通かもしれません。でも、使っている方にとっては、「子どもが生まれたときによく撮ったな」とか、お子様にとっては「これはお父さんの形見だ」とか、価格では測れない価値があるんですよね。私たちはこれを"第二の命"という言葉で呼んでいます。前の持ち主が大切に使ったものを、機能だけでなく、その情緒的な価値ごと、しっかり次の持ち主につないでいく。それが私たちのやるべきことだと考えています。

「もう価値がない」と思っていたカメラが、また誰かの手に

実は、使わなくなったカメラをどうしたらいいか分からない、という方はとても多いんです。フリマアプリに出そうにも、動かないものは売れませんし、そもそも状態が分からず出品をためらってしまう。そのまま押し入れに眠らせてしまう方も少なくありません。

そういうカメラでも、私たちがきちんとメンテナンスをすれば、また使える商品として次の方にお渡しできます。「もう価値がない」と思っていたカメラが、手を入れれば蘇る。それをお客様にお伝えできるのは、とてもうれしいことですし、お客様にとっても、きっとポジティブなことだと思っています。日本人はカメラ好きの方が多く、ご家庭に眠っているカメラはたくさんあります。それらをもれなく引き取って、もう一度価値ある形にしていく。カメラのような精密機器には、レアアースやアルミニウム、ガラス光学素子など環境負荷の高い素材が使われていますから、一台が再び流通すれば、新品をつくる資源やエネルギー、輸送に伴うCO₂を抑えることにもつながります。

そしてもう一つ、写真を撮る人がいなければ、この循環は続きません。スマートフォンの登場で写真を撮る機会はむしろ増えましたが、撮るだけで満足してしまう面もある。だからこそ、「カメラで撮るのもいいな」と感じてくださる方を増やしていきたい。写真文化そのものを、未来につないでいきたいんです。

こだわりは、「商品を挟んだ対話」と、正直な評価

2つあるのですが、1つ目は「中古品でも安心して選んでいただける」ことを、当たり前にしたいと思っています。買い取ったほぼすべての商品は、専門スタッフによる多段階の検査を経ます。外観チェック、動作確認、光学系の検査、センサークリーニングなど、カメラの種類に応じて項目を網羅して、問題があれば修理・調整をしてから販売します。良いところも、そうでないところも、正直にお話しする。そういう積み重ねが、お客様との長いお付き合いにつながっていくのだと思います。

買い取ったカメラは、千葉・新習志野にあるグループ会社の修理工場に集めます。メーカーのライセンスもいただいていて、ここでプロがメンテナンスをするんです。修理が必要でなくても整備して付加価値を上げたうえで、商品として販売する。中古品でも、修理可能なものには保証をお付けしています。

もう一つのこだわりは、買取を単なる作業にしないこと。価格だけで完結させず、商品を挟んでお客様と対話する時間にしています。お客様が手放すときって、ちょっと語りたいものなんですよ。「このカメラでこんな写真を撮った」と。だからネット専業の買取店とは違って、ぜひ店頭にお越しいただきたい。「どんな写真を撮りたいですか」と伺いながらご提案する、いわば"通訳者"のような存在でありたいと思っています。

お客様の声──子育て世代、そして古いカメラに惹かれる若者たち

カメラ好きの方にご愛用いただいているのはもちろんですが、最近は、子育て世代の方によくご利用いただいています。今のデジタルカメラは標準モデルでもかなり高価で、「新品だと予算オーバーなんです」という方が多い。新品が出ると一つ前の機種からの買い替えが多く、それを整備して中古品として販売する。二つ前になればもっと安くなります。子育て世代はなかなか物入りですが、一番写真を撮る時期でもありますから。

もう一つ面白いのが、古いカメラを若い方が好んで買う流れです。フィルムカメラは自分でピントを合わせますし、撮ったものをすぐ画面で確認できない、残り何枚と数えながら撮る、その"不自由さ"がいいんだ、と。今のZ世代を中心に広がっていて、年齢の幅もまだ伸びている実感があります。特に、いわゆる"コンデジ"は人気です。昔は2〜3万円ほどで売られていたコンパクトデジタルカメラが、今は新製品だと10万円近くする。だから当時のコンデジで、きちんと使えるものは貴重なんです。

うれしい声をたくさんいただきます。たとえば、新品では予算オーバーで諦めていた憧れのカメラが、中古品なら手が届いた、という方。「環境にも良いと聞いて、より愛着が湧きました」と言っていただけるのは、私たちもうれしいですね。

フィルムカメラを長く愛好されているフォトグラファーのお客様とお話したときは、「デジタル全盛の時代に、フィルムカメラを大切に扱ってくれるお店はここだけ」とおっしゃっていました。査定するスタッフがカメラの歴史や価値をきちんと理解しているので、売る側としても安心できる、大切なカメラが次の人の手に渡ると思うと、手放すことへの罪悪感がなくなった、と。手放すことは終わりではなく、次の人が受け取ることでもある。そうやって循環していくんです。

従業員の声──「写真部」という仕事と、現場の誇り

写真が好きという従業員が多いですね。当社は正社員として全国転勤がありますから、配属された土地のことは最初は分かりません。そこで、店舗やブロックという単位で「写真部」という活動を、会社の仕事として行っているんです。お客様がどういう場所で写真を撮るのか、日本には四季がありますから、同じ場所でも季節ごとに違う写真が撮れる。そういうお客様の体験を、自分自身の体験にして、次のお客様に提案できるようにする。それを推奨しています。

販売フロアにいたスタッフは、入社前はリユース品に少し抵抗があったけれど、働いてみて考えが一変したそうです。お客様が中古カメラを手にした瞬間の笑顔や、購入後に撮った写真を見せに来てくれるとき、その喜びが自分の喜びになった、と。修理・メンテナンスを15年担当するスタッフは、廃棄されるはずだったカメラが自分の手で息を吹き返す瞬間が最高だ、と言います。

メーカーのサポートが終わったカメラでも部品を工夫して直せることがある、捨てる前にもう一度チャンスを与えることが自分たちの使命だ、と語ってくれました。

地域とともに──「循環の基盤」づくり

2025年11月から、松山市で「ジモティースポット」を始めました。ジモティーさんと自治体が連携した取り組みで、不要になった生活用品を当社が引き取り、店頭に並べてネットにも掲載します。食器から健康器具まで、本当に何でもあります。手放す人と欲しい人の"つなぎ役"を、リアル店舗で果たしているわけです。

ゴミを減らすことは、自治体にとっても大切なテーマです。当社は地方にたくさん店舗を持っていますし、長年その土地でお店を運営してきた信頼もある。松山市からは、ゴミの削減という形で地域貢献として評価をいただいています。地域の側からも、不要品を適正に回収・流通させる窓口として廃棄物削減に貢献している、写真教室や地域イベントとの連携で街の文化的な活性化にも一役買っている、と受け止めていただいています。長くその土地にあり続けてきた店舗網が、コミュニティの一員として機能している。そう言っていただけるのは、本当にありがたいことです。カメラだけでなく、地域のリユース、循環の基盤になれたらと考えています。

49年前のカメラを、子どもたちの手に

「リユースの日」のイベントでは、お子さんたちにフィルムカメラを使う体験をしていただいています。古いカメラを使ったことのない方、特にお子さんはフィルムの入れ方も分からない。使うのは、49年前に生産されたニコンのFEというカメラと、当時のレンズ。これも当社で買い取った商品を使っています。

初めての方ばかりなので、スタッフがシャッターの押し方から覗き方までお教えします。家族と一緒に撮ったり、家族を撮ったり。撮った写真はフィルムをお渡しするので、現像して「あのときこうだったね」と、家族の話題がそこからまた生まれてくれたら良いなと思っています。フィルム代だけでも大きな費用かかっていて、社内の理解を得るのは大変なのですが(笑)、「フィルム体験は楽しかったですか」というアンケートには、9割が「楽しかった」と答えてくれました。

このイベントは好評だったので千葉や神奈川など、各地の地域イベントにも広げていく予定です。また若い世代に写真の楽しさを届けるという意味では、新宿の「北村写真機店」のような店舗にも力を入れています。かつては学校行事で写真を撮れば、必ず現像に出すという用事がありました。今はそれが少なくなっています。だからこそ、若い世代やお子さんにお店に来ていただいて、「キタムラは楽しい」と感じてもらいたいんです。

写真を撮るって、今はとても便利になりました。でも、フィルムは残り枚数を数えますから、「残り1枚、あなたは何を撮りますか」と突きつけられる。その一枚一枚を大切にする感覚を通じて、写真を撮ることそのものの楽しさを伝えたいですね。

そして一番伝えたいのは、「物を大切にしよう」ということです。このカメラは、40年も50年も前に買った人が、しっかり使えるように大切に持っていてくれたからこそ、今ここに存在している。物を大切に使えば、こんなに長く使えるんだということを、子どもたちに知ってもらいたい。買取のときも、このカメラを大切にしてくれる人に渡したい。だから当社できちんとメンテナンスをして、もう一度きちんと売る。その繰り返しのなかで、写真文化と、物を大切にする心を、次の世代につないでいきたいと思っています。

Profile

株式会社キタムラ

カメラ&リユース本部 リユース部長

平賀 元晃

リユース事業を統括し、中古カメラの買取・整備・販売を通じた"第二の命"の循環づくりに取り組む。近年は「ジモティースポット」による地域のリユース拠点づくりや、子どもたちへのフィルムカメラ体験イベントなど、写真文化の継承と地域貢献に注力している。