サステナビリティのリーダーに密着!
ビジネスと社会貢献を両立する人と企業の深掘りシリーズ

「靴が箱に入っていることを知らない子どもたちがいるんです」

支援先のNPOから聞いたこの一言に、オルビスの社員は衝撃を受けたといいます。新品の靴を買った経験がないから、靴が箱に入っていることすら知らない。私たちが当たり前だと思っている日常が、当たり前ではない子どもたちがいる。その現実を知ったとき、「自分たちにできることがある」という確信が生まれたそうです。

オルビスは、スキンケアを中心としたビューティーブランドとして知られています。しかし近年、コロナ禍や社会的な格差の広がりを経て、「そもそもビューティーにたどり着けない方々がいるのではないか」という問いに向き合うことになりました。

その答えの一つとして生まれたのが子どもたちの未来を応援する「ORBIS ペンギンリング プロジェクト」。スキンケアを通じて一人ひとりの魅力を引き出してきた同社が、なぜ子ども支援に取り組むのか。そして、なぜNPOとの協働という形を選んだのか。

プロジェクトを推進するオルビス株式会社 執行役員・樋口伸さんに、取り組みの背景と想いを伺いました。

取材・編集:gooddo編集部

【参加受付中】 企業向けセミナー「企業×NPOの共創で広がる企業価値とインパクト」

企業としてNPOと協働するとなると、何から始めればいいのか悩む方も多いはずです。
6/5開催のイベントでは、本記事の樋口氏ご本人が登壇し、取り組みの裏側や実務のリアルについて語ります。

【こんな方におすすめ】
✓ CSR・サステナビリティをこれから強化したい
✓ 社内の巻き込みや合意形成に悩んでいる
✓ NPOとの協働の進め方を知りたい

自社で何から始めるべきか整理したい方や、具体的な進め方のヒントを得たい方は、ぜひご参加ください。

「美しさを引き出す」は、どこまで届いているのか

スキンケア商品を中心としたビューティーブランドを展開しています。実は出発点に、社会的に常識とされていることに問いを立てる視点を持っていて、油分をたっぷり使った化粧品が主流だった時代に、「油分も必要だが、そもそもお肌にとって、その人が本来持っている水分や、うるおいを作り出す力に着目すべきではないか」というところから生まれたブランドなのです。

世間が当たり前だと思っていることに対して課題を見つけ、解決していくという姿勢は今も変わっていません。お肌にいい成分を与えていくことももちろん大事ですが、どちらかというと、それぞれの人が生まれながらに持っている良さを引き出すということを大切にしています。

ORBIS ペンギンリング プロジェクトは、共感を起点に、お客様とパートナーの3団体とともに子どもを取り巻く社会課題の解決に取り組む活動です。

本取り組みは、2つの方法でご支援いただけます。

1つ目はポイント寄付です。オルビスでのお買い物で貯まったポイントを、1ポイント=1円としてご利用いただき、認定NPO法人キッズドアまたは認定NPO法人ジャパンハートのいずれかを選んで寄付いただけます。

2つ目は商品購入を通じた寄付です。認定NPO法人子供地球基金とのコラボレーション商品をご購入いただくことにより、売上の一部が同団体へ寄付される仕組みとなっています。

  • 認定NPO法人キッズドア(子どもたちの進学支援)
  • 特定非営利活動法人 ジャパンハート(国境を越えた医療・小児がん支援)
  • 特定非営利活動法人 子供地球基金(アートを通じた子ども達の心のケア)

多くのお客様にご支援いただき、これまで※におよそ14万件もの寄付が集まり、約1,600万円を支援先の3団体に寄付させていただいております。

※2024年10月~2025年12月末まで
※オルビスからの寄付金含む

(画像:認定NPO法人子供地球基金_コラボ商品)

"美しさ"の前にある現実──ミッションに立ち返って見えたこと

もともとオルビスは社会課題に想いを寄せているブランドで、リフィル(詰め替え)やピロー包装(簡易包装)など、サステナビリティの文脈には昔から力を入れてきました。改めてブランドの強みを探していく過程で、「ひとりひとりが持つ美しさが、多様に表現されるここちよい社会へ。」というミッションに立ち返ったのです。

ところが、コロナ禍を経て所得格差が広がる中で、美容というのは、どうしても生活が成り立った先にあるものでもあります。「それぞれの事情や環境によって、そもそもビューティーにたどり着けない方々がいるのではないか」という課題が見えてきました。

会社のミッションを本気で実現しようとすると、そこに向き合う必要があると考えました。

社内で議論を重ねる中で、特に課題として浮かび上がってきたのが「子ども」でした。

子どもは自分の環境を自分の力では変えられないという現実があります。様々な事情があったり、まだ年齢的に自立していなかったりと、一番弱い立場にいるのが子どもたちです。

私たちは"生涯ブランド"を目指しています。大人だけでなく、人生を通してずっと関わっていきたい。

将来的にはオルビスの商品を使って、ご自身の本来の美しさや自分らしさを引き出してもらいたいという思いもあります。でもそれ以前に、ビューティーにたどりつく過程で諦めざるを得ないお子さんがいる。その「諦めない」ところに手を打っていきたいという気持ちが一番大きいです。

プロジェクト名に入れたペンギンは、自分の子どもだけでなく、社会全体で子どもを育てていく共同体を作る生き物です。そこに"リング(つながり)"という言葉を重ねることで、子どもたちへの想いを形にしました。

「現場を知らずに、支援はできない」──NPOと組むという選択

一番大きい理由は、「私たちだけでは限界がある」と感じていたからです。

実は、NPOとの協働はすでに行ったことがありました。環境分野では公益財団法人オイスカと2002年から共同で森林保全活動に取り組んでおり、現在は「甲州市・オルビスの森」と名付けた里山の整備・再活用に向けた活動を進めています。こうした中で、信念と方針が明確で、専門性を持つパートナーと連携することの価値を実感していました。

子ども支援の現場について、私たちがすべてを理解しているわけではありません。だからこそ、日々現場で当事者と向き合っている団体の方々の声を起点に動くことが、支援したい方達にとって最も意味のある形だと考えました。

単独で取り組むよりも、そうした方々と協働することで、私たちの強みもより活かせると思っています。

もともとNPOと連携して活動してきた背景があったので、スムーズに受け入れられました。ただ、どれだけリソースをかけるのか、事業とのバランスをどう取るのかといった点では、社内でのすり合わせが必要でした。

その中で意識していたのは、この取り組みを事業と切り離すのではなく、ミッションと地続きのものとして位置づけることでした。単なる社会貢献ではなく、私たちが目指している社会を実現するための延長線上にある取り組みだと整理することで、社内の理解も得やすくなったと感じています。

私たちの中では、事業活動とサステナビリティ活動は"ボーダレス"なのです。まず会社のミッションがあって、それに対してやるべきことがある。ミッションを実現するための手段が事業活動であり、事業活動だけではアプローチできない部分を、サステナビリティ活動として取り組んでいます。

2024年に発売した、コストパフォーマンスに優れた高品質な低価格帯スキンケアシリーズ 『ORBIS SHOT PLUS(オルビス ショットプラス)』 も、「オルビスの商品にたどり着くハードルを下げたい」という同じ思いから生まれたものです。事業もサステナビリティ活動も、すべてミッションという一本の線でつながっている。利益を生み出すことは社会貢献の基盤であり、そこと対立するものではありません。

寄付を通じた金銭的支援のみの関係にはしたくなかったので、私たちと通じる理念を持っているか、また取り組みの方向性に対して理解や共感を示していただき、共に新たな価値創出ができるかどうかを、特に重視しました。

今回の取り組みは一時的な支援ではなくて、継続的に関わっていくことを前提にしていたので、「同じ方向を向いて取り組めるパートナー」であることを大切に思っています。

その上で、実績や信頼性、現場での活動内容なども踏まえながら、現在ご一緒させていただいている3団体を選定させていただきました。

「やるべきことが見えてくる」──試行錯誤の中で得た気づき

一番は、事業とのバランスをどう取るかという点です。企業として商品を販売する役割がある中で、社会貢献活動の発信にどれだけリソースを割くか、カタログやWebサイトの限られたスペースをどう調整するかは簡単ではありません。

また、お客様のポイントの使い方も大切に考えています。お買い物を通じて「ご自身の美しさを引き出す」ためにポイントを使っていただくことも、私たちにとっては大事なこと。一方で、そのポイントを社会貢献に活かしたい、あるいは期限が切れそうなので寄付したい、という想いがあれば、その選択肢も提示する。どちらも否定せず、オルビスを通じて社会とつながっていただければと思っています。

現在は「ORBIS ペンギンリング プロジェクト」のさらなる認知向上・お客様からの共感の獲得に向けて、支援活動の実施にとどまらず、活動レポートや、 子どもたちが置かれている環境の課題、そして支援を通じた変化などを、オウンドメディアやメールマガジンを通じてお届けしています。

また、自分たちに何ができるのかも最初から明確だったわけではなく、NPOの方々との対話を重ねながら探ってきました。

パートナー団体であるジャパンハートさんのご紹介で、小児慢性特定疾病と闘う子どもたちと、そのご家族を支援するイベントに参加させていただいたことがあります。子どもたちが自分を大切にするきっかけづくりと、ご家族に寄り添う時間を提供することを目的に、親子で参加できるスキンケア体験会を実施しました。

最初は大人のご家族の方がスキンケアに興味を持たれるケースが多いのですが、それでいいのです。ご家族を通じて子どもたちにもつながりますし、子どもたち自身もすごく喜んでくれて。泡をふわふわに泡立てて触る体験が、本能的な「気持ちいい」「楽しい」という感覚を引き出すようです。改めてスキンケアにここちよい体験価値があることを実感できたのは私たちにとっても大きな学びでした。

また、子どもたち本人だけでなく、周りの保護者や病院関係者をサポートすることも、結果として子どもたちを支えることにつながると気づきました。大人の方へのサポートは、私たちのスキンケアの強みも活かしやすい。スキンケア商品の寄付やレッスンなど、本業のノウハウやスキンケアを通してご自身と向き合うことの大切さを直接届けられます。これは、現場の方々との対話を重ねる中で見えてきたことでした。

やはり「リアルな姿」を知れることです。キッズドアの渡邉理事長から伺った「1日100円で生活し、食べることだけで精一杯」という実態や、「新品の靴は箱に入っていることを知らない」というお子さんの話は、衝撃的でした。

ニュースで見聞きするだけでは他人事になりがちな現実も、現場の熱量とともに直接聞くことで、「自分たちもアクションを起こさなければ」という強い意志に変わります。この共感をお客様にメルマガでお伝えしたところ、多大な反響と寄付が集まりました。現場を知ることの大切さを、改めて痛感しています。

(写真:左から認定NPO法人キッズドア 木村さん、 オルビス株式会社 樋口さん、小川さん、岩田さん)

「共感は、体験から生まれる」──顧客と社内の変化

ありがたいことに、「子育て中の母です。未来に向けたこの取り組みを応援したいと思いました。」「自分も子ども支援に関わっています。支援を続けるのは大変だけれど、同じように取り組む企業の存在に励まされました。」といったお声をいただくことが増えてきています。わざわざお問い合わせフォームやSNSでメッセージをくださる方もいらっしゃいます。「1ポイントから気軽に参加できる」という点も評価いただいていますし、参加した後に取り組みの価値に気づいてくださる方もいらっしゃいます。

もともと社会貢献に対する意識が高い会社ではありますが、実際に現場の話を聞くことで、より当事者意識が高まってきていると感じます。

例えば、NPOの方から現場の話を聞いた社員が、「自分たちに何ができるか」を主体的に考えるようになり、日々の業務の中でも社会との接点を意識するようになってきています。

単なる取り組みとしてではなく、会社全体の意識に少しずつ影響している実感があります。

当初は「私たちが現場に入ることでお邪魔になってしまうのではないか」という不安があったのですが、実際に現場に足を運んだり、その内容を発信したりしていると「来て終わりではなく、その内容をきちんと発信してくれると分かっているので、逆にありがたい」といった言葉をいただいています。

一過性の関係ではなく、継続的に取り組んでいることで、パートナーとして信頼関係を築けていると感じています。

「気づけば参加している」社会へ

今後は、子どもたち本人への支援に加えて、その周囲の大人への支援もより広げていきたいと考えています。実際に取り組む中で、子どもを支えるためには、その周囲の方々へのサポートも非常に重要だと感じているためです。

また、学生向けのスキンケアレッスンなど、事業ではアプローチできていなかった層に対しても、私たちの強みを活かした関わり方を広げていきたいと考えています。

まずは、各企業が支援したいと考えている支援先の現場で活動されているNPOの方々の声を聞いてみることから始めていただくことをおすすめします。

こうした、社会課題に対する取り組みが広がっていくこと自体は、とても意義のあることだと思います。大切なのは、「何をやるか」だけでなく、支援したい相手先の現状に「どう向き合うか」だと感じています。現場の実態を理解しないまま進めてしまうと、本当に必要な支援とずれてしまう可能性もあります。

だからこそ、まずは実際に現場に足を運んで、当事者や支援に携わっている方々の話を聞いていただきたいです。そうすることで、課題の捉え方や、自分たちにできることの見え方が大きく変わってきます。

必ずしも最初から協働を決める必要はなく、まず理解すること自体に大きな意味があります。

その上で、自社の強みとどうつながるかを考えていくと、一歩踏み出しやすくなるのではないかと思います。

【参加受付中】 企業向けセミナー「企業×NPOの共創で広がる企業価値とインパクト」

企業としてNPOと協働するとなると、何から始めればいいのか悩む方も多いはずです。
6/5開催のイベントでは、本記事の樋口氏ご本人が登壇し、取り組みの裏側や実務のリアルについて語ります。

【こんな方におすすめ】
✓ CSR・サステナビリティをこれから強化したい
✓ 社内の巻き込みや合意形成に悩んでいる
✓ NPOとの協働の進め方を知りたい

自社で何から始めるべきか整理したい方や、具体的な進め方のヒントを得たい方は、ぜひご参加ください。

Profile

オルビス株式会社

執行役員

樋口 伸(ひぐち なおし)

ポーラ・オルビスグループの各主要会社で、経理財務、経営企画、コーポレート部門中心のキャリアを歩む。

株式会社ポーラ・オルビスホールディングス上場に向けたオルビス株式会社の責任者、オルビスの海外法人代表を務め、その後、グループ内の製造・研究部門を担うポーラ化成工業株式会社やホールディングスにて、中期事業計画作成や会計・経営管理のBPRを行うプロジェクトをリーダーとして推進。2024年1月よりオルビス株式会社 経営企画・法務担当執行役員に就任し、2026年よりサステナビリティ活動も含めたCSR領域を管掌。

オルビスが掲げる「ひとりひとりが持つ美しさが、多様に表現されるここちよい社会へ」というミッション実現に向けて、お客様やパートナー団体と連携して子どもたちを支援する『ORBIS ペンギンリング プロジェクト』や、学生向けスキンケアレッスン『ミライ肌アトリエ』を通じて、なりたい自分に向けたセルフケアの大切さを伝える活動などに取り組んでいる。