サステナビリティのリーダーに密着!
ビジネスと社会貢献を両立する人と企業の深掘りシリーズ

「非営利のファンドをやるのも、ファンドクリエーションの使命ではないか」。株式会社ファンドクリエーション代表取締役社長・田島克洋さんが公益財団法人 東京コミュニティー財団を引き受けたのは、旧友から言われた一言がきっかけでした。投資家から資金を預かって運用する会社と、寄付者から"社会のために役立てたいという想い"ごとお金を預かる財団。一見するとまったく別物に見えますが、田島さんにとってはどちらも本質は同じ「ファンド」です。ファンドクリエーションが創業以来大切にしてきた「お金を必要なところへ循環させる」という考えが、なぜ社会貢献の領域へ広がっていったのか。その理由を伺いました。

取材・編集:gooddo編集部

お金は社会にとっての"血液"

2002年に設立した会社で、名前のとおり、ファンドを作っていく、クリエーションしていくところから始まりました。

は、もともと大和証券に13年おりまして、経営企画、金融商品の開発・運用に携わっていました。当時は、大手の証券会社はどこも商品が似たり寄ったりで、同じようなファンドを作ってお客様に営業力で一方的に売っていく。支店の営業もやっていましたが、個人的には投資信託は一番いやな商品でもありました。日経平均が上がっているのに基準価額は下がるファンドまでありました。

それならば、投資家の方々に喜んでいただけて、営業マンも自信を持って勧められる、そして世の中に貢献するような面白いファンドが作れるのではないか。その思いが、ファンドクリエーションの出発点です。

お金は、社会にとって「血液」のようなものです。必要なところへ循環することが何よりも大事だと考えています。

世の中にあるお金には、ほとんど増えないかわりに元本が減らない銀行預金のようなお金と、企業の成長や新しい事業を支えるリスクマネーがあります。誰かが新しい挑戦をするときに必要になるのは、リスクマネーの方です。

ところが日本は、お金を持っているのは高齢者の方が中心で、退職金が入ってきても、全部預金に入れてしまえば、銀行は国債などの安全資産に向かう。集まったお金が、リスクマネーとして企業や事業に回っていかない。個人の方々が自分でリスクを取れる形にならないと、循環はなかなか難しいのです。

ただ、すべての個人が投資の知識や経験がある方とは限りません。そこで多くの方から資金をお預かりし、ファンドにして専門家が代わりに運用する。これをもっといろいろなアセットに広げ、お金を必要とするところへ循環させていくそれがこの会社を作った理由であり、今でも大きな使命です。

最初に手がけたのも、個人の方が参加しやすい商品でした。国内の賃貸マンションを一棟単位で買ってきて、その賃料を毎月分配する仕組みの不動産ファンドで、1万円、10万円という少額からでも投資できる形にしました。

「ご勇退ください」から始まった、何もないところからの創業

まったく考えていませんでした(笑)。前職では子会社の社長を務めていたので、その子会社を上場させればいいかなと。自分で独立することは考えていませんでした。

ところが、その会社をクビになってしまいましてね。もう一人のパートナーと、「今更サラリーマンをするより、自分達が本当にやりたいことをやろう」と。やりたいことをいろいろと考えてみたところ、やはりファンドの会社だと思い、「ファンドクリエーション」という社名を思いついたのです。普通なら目算をつけて起業するのでしょうけれど、いきなりクビになったので本当に何もなくて、大変なスタートでした。

前職は不動産デベロッパーで、私はそこで子会社の社長をしていました。当時は毎月分配型のファンドしか売れない時代で、あるファンドが5,000億円を突破したという記事が日本経済新聞に出たのです。そこでピンときて、毎月分配型の不動産ファンドを作ればいける、と。

そのアイデアを前職の社長に持ち込んだら、すごく面白いと賛同してくださり、証券会社を作り、従業員を15人ほど雇い、わずか8か月でファンドを立ち上げました。

問題は、お客様がいなかったことです。30億円集める予定のところ10億円までは集めたのですが、まわりの方々が「こんなに大騒ぎをして、10億しか集まらないのか」と言い始めるのです。そしてある日突然、「ご勇退ください」と。最初は意味が分からなくて。よく考えると、勇ましく退く、つまり辞めろということかと(笑)。

集まらなかったのは事実ですから、「ご期待に添えず申し訳ありませんでした」と、何も文句を言わずに辞めました。

そのとき作っていたファンドの資料などを持って、証券会社をまわって出会ったのが、アイザワ証券です。私が面白いと思った点に同じように共感してくださって、「うちが全部面倒を見るから、思いっきりやってみろ」とご支援頂けることになりました。

起業から約1年後に最初のファンドが出来上がり、個人の投資家から26億円を集めていただき、約50億円の物件を購入しました。しかもその物件を売ってくださったのは、私がクビになった前職の会社なのです。潔く辞めたからこそ、逆にご協力いただけた。あの船出は、それがなければ成立しませんでした。いまでも、前職の会社に感謝しています。

その後、不動産ファンドは350億円ほどまで積み上がり、レバレッジをかけて1,000億円ほどの規模で50棟ほどの物件を購入しました。何もないところから作った会社ですが、4年で上場できました。

「非営利のファンドをやるのも、御社の使命ではないか」

「社会で利益を上げさせていただいたのだから、社会に還元したい」、それは創業して黒字になった時から考えていました。そこで、会社の利益の一部をNPOに寄付することを始めました。大事にしたのは、寄付先を私ひとりで決めないこと。社員の有志に参加してもらい、投資先を見つけるのと同じ気持ちでリサーチしてもらいました。あとは、カンボジアに小学校も作りました。プノンペンから10時間ほど離れた奥地で、今でも「ファンドクリエーション小学校」という名前を掲げていただいています。

ただ、企業としてできる寄付には限界があります。自社の利益だけを原資にしていると、社会に届けられる金額はどうしても限られます。

東京コミュニティー財団の代表をしている市村さんと、若いころに出会っているのです。私は大和証券時代にワシントンDCのロースクールへ留学させてもらっていたのですが、彼もちょうどそこに留学していました。お互い27歳くらいですね。彼は松下政経塾の出身で、その後、衆議院議員になりました。まったく違う道を歩んだのですが、「世の中を良くしていきたい」という思いで、若いころから夜中まで議論していた仲なのです。

彼がワシントンで研究していたのが、NPOとコミュニティ財団でした。アメリカにはフォード財団のような大金持ちが作った財団もありますが、コミュニティ財団は、社会に貢献したい個人などから資金を預かり、それぞれの想いに沿った基金を財団の中に作り、その資金を地域や社会のために活用していく仕組みです。

彼はそれを日本に広めたいと考えて、国会議員として制度改正のチームに入り、法制化を実現させました。思い入れが強いですから、コミュニティ財団の第一号の申請を知人に頼んで出してもらった。そうして生まれたのが東京コミュニティー財団です。

設立から数年後に市村さんから、「東京コミュニティー財団の運営を引き受けてもらえないか」と相談があったのです。そして、こう言われました。「ファンドクリエーションは営利のファンドをやっているけれど、非営利のファンドをやるのも、ファンドクリエーションの使命ではないか」と。

これには、私もピンときました。それまで、財団と、私がやっているファンドは、まったく別物だと考えていました。でも本質はとてもよく似ています。お客様の資金をお預かりし、専門家が適切な投資先に届けるのが営利ファンド。一方、寄付者から資金と想いをお預かりし、その意向に沿ったNPOや社会課題へ届けるのが非営利の基金です。目的は違いますが、「人様のお金を責任をもって預かり、必要なところへ届ける」という仕事の本質は同じです。

さらに、自分の会社のお金で寄付できる額には限界があるけれど、多くの寄付者の方からの資金をお預かりできれば、社会に届ける金額も大きくなります。それならば、ファンドを作ってきた私たちの経験も生かせる。そう考えて、東京コミュニティー財団の運営に携わることになりました。

使い道を明確にした寄付を実現する

やはり、寄付者の方の想いを真摯に受けとめ、寄付者のご意向に沿った基金をテーラーメイドで設定できるところですね。

よく比較されるのは、赤十字やユニセフといった大きな団体です。すばらしい活動をされていますが、自分が寄付したお金がどこに使われるのかは分からない。一方で、「自分の寄付が具体的にどこへ届き、何に使われたかを知りたい」という方もいらっしゃいます。

東京コミュニティー財団では、寄付者の「子供を支援したい」「医療分野に役立てたい」「故郷に恩返しをしたい」といった想いを丁寧に伺います。

そのうえで、財団が助成先を調査し、面談などを行い、適切な団体や活動を選定します。そして、「この団体へ、このような目的で、これだけの資金を届けました」と寄付者にご報告します。その団体の方々がどう喜んでくださったかまで具体的にお伝えすると、「自分のお金が役に立ってよかった」と言っていただけます。そこが、当財団を選んで頂いている理由かと思っております。

病気のお子さんとそのご家族を支えてあげたい、という想いをお持ちの寄付者の方がいらっしゃいました。そこで複数の団体に助成をさせていただいたのですが、その中に、余命がどれくらいか分からない小児がんのお子さんの「ディズニーランドに行きたい」という夢を叶える団体がありました。

健康であればすぐに行けます。けれど、そういう病気のお子さんが行くには看護師さんが2人ほど付き添って、チームで行かないと無理なのです。地方の方だと、それだけで100万円ほどかかってしまう。親御さんは何とかしてあげたいけれど、自分たちだけでは難しい。それを支援しているNPOがあり、基金から助成することで、お子さんの夢を実現することができました。

後日、そのお子さんがディズニーランドで楽しそうに過ごしている様子を寄付者の方にご報告したら、「こんな形で自分のお金が使われるとは、自分だけでは思いつきもしなかった。東京コミュニティー財団に頼んでよかった」とおっしゃってくださいました。

寄付者の方の想いを受け止めて、それを実現できる活動を探し、つないでいく。まさにこれが、コミュニティ財団の役割なのだと思いました。

社内ベンチャーのように、財団が育っている

強制はまったくしていません。手を挙げてもらうか、興味がありそうな社員に「ちょっとやってみない?」と声をかけたりしています。現在は7〜8人くらいが直接に関わっています。

感覚としては、社内ベンチャーに近いと思います。今すごく勢いがあり、次々と新しい話が来る。相談の件数もうなぎ上りで、資金規模も億単位の話が多くなっている。担当社員も積極的に動いてくれます。

能登半島地震から半年後に、ある寄付者の方から「被災地で活動する医療系のNPOを支援したい」とご相談をいただき、基金を設立しました。その際、担当社員が「次に何かが起きたときすぐ動けるように、前もって基金を作りましょう」と寄付者に提案し、追加の寄付で「緊急災害医療支援基金」を作りました。被災地医療支援を行うNPOと事前に連携しておくことで、その方にゆかりのある地域で大きな災害が発生した際には、すぐに必要な資金を届けることができる仕組みができました。

(財団を担当する川添さん)
ファンドの仕事と財団の仕事は、それほど違うという感覚ではありません。投資家からお金を集めるか、寄付者から寄付金をお預かりするのか。そして投資家からのお金をどう運用するのか、寄付金をどこの団体に助成するのか。営利か非営利かという違いはありますが、資金を集め、より有効なところへ届けるという意味では、同じなのです。

投資では、資産を増やすことが投資家の目的です。でも寄付者の方は、お金が増えなくてもすごく感謝してくださる。お金を有効に活用できたから、助成した先が喜んでいるから、と。それはとても励みになりますし、やりがいを感じます。

大手がやらないところに、まだまだ余白がある

世の中のニーズに合った商品を、大手がやっていないところで開発していきたいですね。

例えば今、トラックに投資するファンドをやっています。日本の物流インフラはピラミッド構造で、大手の運送会社はごく一部。多くの会社は社長が自らドライバーをしている従業員10名程度の会社です。ガソリン代は高くなる、人材不足で人は採れない、高齢化も進む。でもその人たちがいなくなると、本当に物流が止まってしまいます。

銀行がどんどん貸すようなところには、私たちの出番はあまりありません。資金繰りに困っていらっしゃるところから、私たちがトラックを買い取らせていただく。そのうえで、そのトラックをそのまま運送会社に貸し戻し、今までと同じように仕事ができるという仕組みを作りました。広い意味で日本の物流インフラを支える仕事であり、投資家の方には税制上のメリットもある。まさにファンドクリエーションならではの商品です。

非営利の分野は、本当にまだまだこれからです。

一つは「遺贈」(遺言によって財産の一部または全部を寄付すること)です。東京近郊にお住まいで、ご自宅を売れば何億円という方はたくさんいらっしゃる。ご自身が築いてきた資産を「社会のために役立てたい」と考えている方は少なくありません。一方で、遺贈寄付という選択肢や、ご自身の想いを具体化する方法をご存じない方も多くいらっしゃいます。ここで大事なのは、信頼できる専門家や金融機関などと一緒に、寄付者の方に財団の実績や仕組みをしっかりとご理解いただき、安心して頂いた上で進めていくことです。

はい。普通の奨学金は「経済的に恵まれない家庭の学生」と予め対象が決まっている場合がほとんどですが、当財団は寄付者のご要望で対象の学生を決めるので、前例があまりなく、認可を頂くのに時間を要しました。

寄付者の方とご相談しながら、東京コミュニティー財団らしい奨学金を作ろうと「チャレンジ奨学金」を設立しました。特徴は、「何に挑戦したいのか」「その挑戦で何を実現したいのか」という学生自身の志を審査対象とし、家庭の経済状況は問わない。ただ一言、君のやる気にかける。何をやりたいのか、それをプレゼンしてくれ、と。

そうしたら、いろいろな学生が応募してくる。将来起業家になりたいから海外で学びたい。今は医学部にいるけれど、この分野ではイタリアのこの大学のこの先生がすごいので、その方のもとで勉強したい。すごい熱量でプレゼンしてくる。日本の若者もまだまだ捨てたものではない、この子たちがひょっとしたら日本や世界を変えてくれるかもしれない。こちらもプラスのエネルギーをもらえます。

「大義がないと、続かない」

月並みに聞こえるかもしれませんが、「世のため、人のため」ということです。

たまたまのご縁で会社を作らせていただき、いろいろな方の支援もあって、起業して24年が過ぎました。やはり会社は、社会に何らかの形で貢献をしていく必要がある。それがないと、長くは続かない。

一過性で成功している会社は、たくさんあります。不動産ファンドはすごく利益が上がる時期がありましたが、リーマンショックでほとんどいなくなってしまった。それでも今も当社が残っているのは、そういう心を信条として大事にしてきたからだと思います。

財団の活動も同じ考えからです。ただ、それができるのは、本業でしっかりと利益を上げ、財団の活動に賛同する社員がいるからです。世の中のため、人のため、そして社員のため。大義がないと、会社は続かないと思います。

私も60代になりましたが、「人を残すは一流」という言葉がありますよね。若い社員がどんどん活躍して、人が育っていってほしい。うちの会社を辞めて別の会社で頑張っている人もいますが、その人がそこで社会に対してプラスの貢献をしてくれれば、それでいいと思います。

会社も、財団も、根っこにあるのは同じです。人様のお金をお預かりして、必要なところへ責任を持って届けていく。そして、その仕事を通じて人が育っていく。そういう形で社会に貢献し続けることを、これからも大切にしていきたいと思っています。

東京コミュニティー財団:https://tmcf.or.jp/

Profile

株式会社ファンドクリエーショングループ

代表取締役社長/

公益財団法人 東京コミュニティー財団 理事

田島 克洋

慶應義塾大学卒業後、大和証券に入社。企業派遣生としてジョージタウン大学法律大学院を修了し、ニューヨーク州弁護士資格を取得。ニューヨークでヘッジファンドの開発・運用を統括したのち、2000年に同社を退職。不動産デベロッパーの子会社社長を経て、2002年12月に株式会社ファンドクリエーションを設立し、2006年10月にジャスダック証券取引所(現・東京証券取引所スタンダード市場)へ上場。2009年に持株会社体制へ移行し、株式会社ファンドクリエーショングループ代表取締役社長を兼務。現在は、時代のニーズに先駆けた金融商品の開発に取り組む一方、公益財団法人 東京コミュニティー財団の理事として、寄付者一人ひとりの想いに沿った基金の組成・助成を推進している。