
1分でわかる!gooddo編集部まとめ
- 伊藤忠商事は、企業横断型プロジェクト「Life Design Junction!」を立ち上げ、ライフデザイン支援を企業の枠を超えて広げようとしている。
- あわせて発表した「そだキャリ+」は、育児と仕事の両立に悩む人に寄り添う4カ月・全9回の伴走型キャリア支援プログラム。
- 発表会には山口もえさん、小籔千豊さんも登壇し、夫婦の対話や家族で支え合う子育ての大切さを語った。
- 子育てとキャリアの両立を“個人のがんばり”に任せない仕組みづくりが、企業にも社会にも求められている。
ライフデザイン経営が、いま必要とされる理由

「子育てか、キャリアか」。そんな二者択一を前提にした働き方は、もう限界にきているのかもしれません。
伊藤忠商事株式会社は2025年3月5日、企業向けキャリア支援サービス「そだキャリ+(プラス)」のローンチ発表会を開催しました。
発表会では、ライフデザイン支援を企業横断で広げるプロジェクト「Life Design Junction!」の取り組みが紹介されたほか、山口もえさん、小籔千豊さんによるトークセッションも行われました。
同社が立ち上げた「Life Design Junction!」は、社員の人生設計と働き方を切り離さずに支える「ライフデザイン経営」を、1社の制度ではなく社会の仕組みとして広げようとする試みです。
背景にあるのは、少子化や人手不足の深刻化です。働き続けたいのに、結婚や出産、育児をきっかけにキャリアの継続が難しくなる。そんな状況を変えるには、本人の努力だけではなく、企業側の支援が欠かせません。伊藤忠商事はこれまでも働き方改革や健康経営を進めてきましたが、今回はその知見を社外にもひらく形で動き出しました。

発表会では、三菱UFJ銀行、パナソニック、ユニ・チャームの担当者も登壇し、それぞれの企業が取り組む人的資本経営やライフデザイン支援について紹介しました。
例えばパナソニックは、女性特有の健康課題をサポートするフェムテック領域の取り組みを紹介。ユニ・チャームは、生理による働きづらさなど女性の健康課題がキャリア形成に与える影響について言及し、環境整備の重要性を語りました。
伴走型支援サービス「そだキャリ+」は、担当社員自身の原体験から生まれた

今回発表された「そだキャリ+」は、働きながら育児に向き合う人に寄り添う伴走型支援サービスです。
4カ月・全9回のプログラムで、1on1、グループセッション、家族とのペアセッションを通じて、本人の価値観や不安を言葉にしながら“キャリアの地図”を描いていきます。担当するのは、育児経験を持つ専門人材「キャリアケアラー」。評価や指導ではなく、継続的に寄り添う存在として設計されているのが特徴です。
このサービスの背景には、開発を担った古賀さん自身の原体験があります。子育てと仕事の両立、キャリアの挑戦期と家庭の大事な時期が重なる苦しさ、夫婦関係の揺らぎ。そうした実感から生まれたからこそ、「そだキャリ+」は制度の説明ではなく、当事者の悩みに寄り添う形で設計されたサービスだといいます。
開発者インタビュー|伊藤忠商事 古賀さんの想い

「そだキャリ+」はどのようなきっかけで生まれたのでしょうか?
もともと私は航空分野の営業を長く担当していたのですが、育休復帰後に新規事業開発の部署に配属され、フェムテック関連のプロジェクトに関わるようになりました。
その中で、自分自身が子育てと仕事の両立にとても悩んだ経験があります。キャリアの挑戦期と、子育ての大事な時期が重なり、夫婦関係もうまくいかなくなることもありました。
周囲の同世代に話を聞くと、「同じ悩みを抱えている人が多い」と気づきました。
そこで、この課題を解決する取り組みに挑戦したいと会社に相談したところ、社内の新規事業組織である第8カンパニーが後押ししてくれ、「そだキャリ+」の開発につながりました。
伊藤忠商事がこの取り組みを行う意義はどこにあるのでしょうか?
企業が自社の制度として取り組むだけでは、社会全体はなかなか変わりません。
だからこそ、これを事業として外に広げることで、他の企業にも届けていきたいと考えています。
伊藤忠商事は「三方よし」という考え方を大切にしている会社です。
人的資本経営やライフデザイン支援の取り組みを社会に広げることで、企業価値の向上にもつながりますし、社会全体にとっても意味のある取り組みになると考えています。
育児はキャリアのマイナスになると考える人も多いですが、どう思われますか?
実は、そうとは限らないと思っています。
今回の実証でも見えてきたのですが、家庭にしっかり関わっている人は、職場でもチームワークやコミュニケーションが良い傾向があります。
子育てをしていると、限られた時間の中で仕事を進めたり、家族と調整したりする必要がありますよね。
その過程で、タイムマネジメント力や対話力などの力が自然と鍛えられているんです。
だから、子育てはキャリアのブレーキではなく、むしろ新しい能力を育てる機会にもなり得る。
そうしたことをデータとして示していくことで、育児に対する見方も変えていきたいと思っています。
山口もえさん・小籔千豊さんの言葉が映した“両立のリアル”

発表会では、山口もえさんと小籔千豊さんによるトークセッションも行われました。共働き家庭のリアルな悩みや、夫婦の対話の大切さについて語られる場面もありました。
山口さんは「我が家のスローガンは“家族は協力”」と話し、夫や子どもとアプリで予定を共有しながら、送迎などを助け合っていると紹介しました。また、夫婦の対話については「感じたこと、思ったことは言葉にする」と語り、言わなくても分かるだろうではなく、気持ちを丁寧に伝える大切さを強調しました。
一方の小籔さんは「家族はサッカーチームと同じ」と表現。夫婦のどちらかが主役というより、状況に応じてポジションを変えながら、家族全体でどう勝つかを考えるべきだと語りました。さらに「常にそもそもを念頭に置く」として、結婚した時や子どもが生まれた時の原点に立ち返ることの大切さにも触れました。


山口さんと小籔さんの言葉から、子育てと仕事の両立に正解は一つではないことが伝わってきました。それでも、気持ちを言葉にし、家庭の中で役割や価値観をすり合わせていくことが、キャリアを諦めない土台になる。そんなメッセージが、サービス説明だけでは届きにくい“生活のリアル”として伝わってきます。
キャリアと育児を対立させない社会へ
「そだキャリ+」は個人向けのキャリア支援サービスですが、家庭での対話を通じて職場のコミュニケーションにも変化が生まれる可能性があるといいます。家庭でのコミュニケーションが職場のチームワークにもつながる―。そんな考え方も、今回の発表では示されていました。家庭の中で対話できる人は、職場でも対話しやすい。育児を経験することで身につく調整力や時間管理力、関係構築力もあるはずです。子育てをキャリアのブレーキとみなすのではなく、新しい能力が育つ機会として捉え直すことが、これからの企業には必要なのではないでしょうか。
伊藤忠商事の挑戦は、自社の実践を起点に、他社ともつながりながら社会に広げていくところに意味があります。子育ても仕事も、どちらかを諦めるものではない。そう考えられる環境を企業がどうつくっていくのか。「Life Design Junction!」と「そだキャリ+」の取り組みは、そのヒントを示す試みと言えるかもしれません。
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【解説】伊藤忠商事の取り組みについてもっと深掘り!

「Life Design Junction!」って、どんな取り組みなんですか?

会社ごとにバラバラに行われてきたライフデザイン支援を、企業の枠を超えて広げていこうという取り組みです。たとえば、1つの学校のクラスだけで工夫するのではなく、学年全体で「どうすればみんなが過ごしやすくなるか」を考えるようなものです。伊藤忠商事は、この場を通じて、知見共有や実証を進めたいとしています。

そもそも「ライフデザイン経営」って何ですか?

社員が、仕事だけでなく、結婚、子育て、健康、お金のことも含めて、自分の人生を考えやすい環境を会社がつくることです。経済産業省は、こうした支援が社員のウェルビーイングと企業価値の向上につながるとしています。つまり、やさしい制度というだけでなく、会社の成長にも関わる考え方なんです。

「そだキャリ+」はどんなサービスなんですか?

育児をしながら働く人が、自分の不安や希望を整理し、これからのキャリアを描くのを支える伴走型サービスです。1回の研修で終わるのではなく、4カ月かけて少しずつ考えを深めていくのが特徴です。地図がない道を歩くより、横で一緒に地図を描いてくれる人がいる方が安心ですよね。その“伴走役”がキャリアケアラーです。

どうして今、こういう支援が必要なんですか?

少子化と人手不足が進んでいるからです。2024年の合計特殊出生率は1.15でした。仕事と育児の両立を個人の根性だけに任せてしまうと、働き続けたくても続けられない人が増えてしまいます。チーム戦なのに、一部の人だけ重い荷物を背負って走っている状態を、社会全体で見直す必要があるんです。

子育てと仕事の両立を支えるために、周りの人や会社には何ができるのでしょうか?

子育てと仕事の両立は、当事者だけの問題ではありません。職場のメンバーが互いに状況を理解し合い、チームで支え合うことも大切です。また、企業としてもライフデザイン経営に取り組み、キャリアとライフイベントを両立できる環境を整えることが求められています。「そだキャリ+」のサイトも見てみてくださいね。

