

サステナビリティのリーダーに密着!
ビジネスと社会貢献を両立する人と企業の深掘りシリーズ
「『売る』という選択肢が当たり前になることで、循環が生まれ、環境課題の解決にもつながる。そういう社会をつくりたいんです」──そう語るのは、株式会社ソフマップ リユース事業部 部長・河原橋さん。長らく新品販売の現場を歩んできた河原橋さんが、今は中古品の売買に心から誇りを感じると言います。その変化の背景と、1983年から40年以上続くリユース事業の使命を伺いました。
取材・編集:gooddo編集部
ソフマップとは──「リユース・販売・サポート」三本柱の全体像
まず、ソフマップはどのような会社か教えてください。
ソフマップはパソコンや周辺機器、スマートフォンなどを扱う家電量販店で、ビックカメラグループの一員です。大きく「リユース(中古の売買)」「小売り(新品販売)」「サポートサービス」の三本柱で事業を展開しています。
私が担当するリユース事業部は、中古商品の買取から価格設定、販売まで一貫して対応している部署です。お客様から直接買い取るだけでなく、法人(BtoB)からの仕入れも行っており、店頭買取に加えてインターネットを通じた宅配買取サービス「ラクウル」も2018年から運営しています。
販売だけではなくサポートというのも、かなり力を入れているんですね。
そうなんです。購入後の「困った」に答えるのも、私たちの大事な仕事です。コンタクトセンターで電話対応をしたり、パソコンを遠隔操作でサポートしたりしています。
法人向けには2024年に「LCM」というサービスも立ち上げました。企業にパソコンを販売・レンタルして、選定から設定まで丸ごとサポートするものです。また2022年からは「ITAD」というデータ消去サービスも始めています。GIGAスクール構想でChromebookを大量導入した学校が数年後に入れ替える際に「データはどう消せばいいの?」と困るケースがとても多くて、データ消去と買取をセットにしたサービスとして提供しています。
1983年、まだ「リユース」という言葉もなかった時代に
1983年に始まったというのは、かなり早い取り組みですね。当時の状況はどんな感じだったのですか。
ソフトウェアのレンタルで創業したのが1982年で、翌年にはもうリユースを始めています。当時はパソコンが一般家庭にほぼ存在しない時代でした。単価も高く、デスクトップが主流で、「個人が買うもの」というより「法人が使うもの」という感覚だったんです。ちょうど私が生まれた年と同じなんですが(笑)、そんな時代の話です。
そんな中でも、創業当初から二つの軸があったと聞いています。一つは「循環することで社会に貢献したい」というもの、もう一つは「まだデジタルを使えていない人たちが、もっと気軽に使えるようになる環境をつくりたい」というものです。だから販売だけじゃなくて、買取もサポートも最初からセットでやろうとしてきた。この思いは今もずっと変わっていません。
40年以上たって、世の中はどう変わりましたか。
大きく変わったのはフリマアプリの普及ですね。フリマアプリが広がったことで、「中古でも全然いいじゃないか」「むしろお得じゃないか」という感覚が、特に若い世代を中心にかなり浸透してきました。3〜4年前は、新卒で入ってくるメンバー自身が中古に対して「ちょっと汚いんじゃないか」というイメージを持っていることがあって。でも今はもう本当に変わりましたね。ここ数年で意識の変化をすごく肌で感じています。

「前の人のデータが残ってる?」──中古への不安を信頼に変える仕組み
中古品を買うときに心配になることの一つが、データの問題だと思います。
そうなんです。お客様の不安は大きく二つあって、一つは「前の人のデータが残っているんじゃないか」というもの、もう一つは「汚いんじゃないか」という見た目の問題です。
スマホやパソコンのデータを使われる怖さって、そういう映画がありましたが、ストーカー被害だったり、クレジット情報が抜き取られて金銭的な被害に遭ったりといった実例が世の中に出てきたことで、みなさん少しずつ意識されるようになってきています。だからこそ、「自分たちで消去しました、大丈夫です」というだけでは納得していただけない。
エイデックという第三者機関があって、私たちが使う消去ソフトの指定から、消去作業を行う拠点(船橋商品センター)の環境審査まで行っています。その審査基準をクリアすることで、エイデック名義のデータ消去証明書を発行できるんです。外部の目が入ることで、「本当に消えているんだな」とお客様に信頼していただける。これが一番大事なことだと思っています。
それは安心ですね。見た目の品質管理はどのようにされているのでしょうか。
商品をA〜Eのランクで評価して、お客様が一目でコンディションを確認できるようにしています。また購入後1ヶ月は初期不良があれば交換対応しますし、有償の長期保証もあります。「中古だから多少は…」ではなく、「中古だからこそ、安心の仕組みが必要」という考え方でやっています。
購入されたお客様からはどんな声が届きますか?
「思っていたより全然きれい!」「この価格で買えるなんてお得」というお声が一番多いですね。「中古のイメージと違った」というのが、私たちにとって一番嬉しい言葉です。

店が変わったら、来てくれる人が変わった──什器一新がもたらした「気づき」
中古のイメージを変えるという点では、店舗の環境にも大きな変化があったのではないでしょうか。
これは正直に言うと、7〜8年前まで「中古を売っているんだから、店内のショーケースなどの什器にお金をかけなくてもいいだろう」という意識が現場にあったんです。だから店内がお世辞にもきれいとは言えない状態で……昔の什器(ショーケース)って、ガラスの扉のタグ付けが悪くてスライドが引っかかったりもしていて(笑)。
そこに、「リコレクション」という店舗ブランドの展開基準を全店舗に導入することにしました。ガラスショーケースをグレーで統一したり、棚やPOPの基準を揃えたり。「中古なのに、なぜこんなにきれいなの?」と思ってもらえることが目標でした。
その変化で何が起きましたか?
来てくださるお客様の層が変わりました。以前私がいた店舗では、子連れのお客様が入ってくることがほぼなかったんです。それが什器を刷新して店内を明るくしたら、「ちょっと安いiPhoneはないですか?」と子どもを連れてきてくださる方が増えてきた。あの変化は本当に嬉しかったですね。
それと、従業員からも「什器がきれいになってメンテがしやすくなった!」という声がすごく多くて。以前はケースが引っかかってイライラしていたのが、スルスル動くようになったって(笑)。商品の見せ方への投資は、お客様にとっても従業員にとっても、プラスになると実感しています。


「売る」が当たり前になる社会をつくりたい──サーキュラーエコノミーへの使命
リユース事業部としてのミッションを、一言で表すとどうなりますか。
「新品を買ったら、使い終わったら売る。それが当たり前になる社会をつくりたい」、これに尽きます。
今はまだ、使い終わったら捨ててしまう方が多い。でも、そのモノにはまだ需要があるかもしれない。売れば誰かが使えるし、売ったお金を次の買い替えに充てることもできる。循環が生まれることで、レアアースなど鉱物の新規採掘を減らすことにもつながります。「売る」という選択肢がもっと当たり前になれば、お客様にとっても社会にとっても、いいことだらけだと思っています。
そのミッションはソフマップだけでなく、グループ全体の動きともつながっているのでしょうか。
はい。ビックカメラ・コジマ・ソフマップの3社で話し合い、中期経営計画の柱として発表しました。実はビックカメラやコジマは新品販売がメインですから、「耐久消費財の買換えサイクルが年々長くなっている」というのがグループ全体の課題としてあったんです。物価高でなかなか買い替えられないお客様が増えている。
そこで注目されたのが、ソフマップの「買取」という機能でした。売って手元にお金が入れば、買い替えのきっかけになる。グループで一緒にそのサイクルをつくっていこうというのが、今取り組んでいることです。「ソフマップだからできる」という強みをグループ全体で活かしていこうとしています。

「自分たちのやっていることが、世界とつながっている」──社員が誇りを持てる環境づくり
若いスタッフの方に、リユース事業の意義をどのように伝えているのでしょうか。
今の若い世代って、「何のためにやるのか」「自分たちの仕事はどこにつながるのか」という意義が見えないと、なかなか動いてもらえないんです。それは悪いことじゃなくて、むしろ「意義を示せばちゃんと動いてくれる」ということでもある。
弊社の社長が、管理職や一般従業員に直接説明する場を設けています。「リユース事業って、具体的にどんな社会貢献につながるんだ?」という話です。たとえば「レアアースの採掘を減らすことが、実は紛争地域の問題解決にもつながる」という内容を聞いたとき、私自身もハッとしました。ただ中古品を売り買いしているんじゃないと。
河原橋さんご自身の意識も、変わってきましたか。
私自身、もともとは新品販売の現場が長かったんです。お客様から「ありがとう」と言ってもらえることにやりがいを感じていた。でも今は、リユース事業を拡大していくことそのものが、環境課題の解決につながっているという実感があって、それが新しいやりがいになっています。
テラルネッサンスという、紛争地域や途上国の支援に取り組む国際NGOがあるのですが、2024年に2回、中古パソコンを寄付する取り組みを行いました。それだけでなく、テラルネッサンスのご担当者に実際に来社していただいて、従業員の前で直接お話してもらったんです。
難民の方々の職業訓練や、地域での仕事づくりに私たちのパソコンが使われているという話を聞いて、スタッフから「自分たちの仕事がこんなところまでつながっているんだ」という反応がたくさんありました。それが誇りに変わっていくのを目の当たりにして、私もすごく嬉しかったですね。

モノの循環から、人の循環へ──新しい取り組みと次世代への橋渡し
最近、また新しい形のリユースに取り組まれていると聞きました。
はい。「モノを循環させること」だけでなく、「人の問題解決」にもリユースを活かせないかと考えて動いているところです。2026年6月から、ピープルポート株式会社と協力して「ZREO PC Sシリーズ 」という環境型リユースパソコンの販売をソフマップ池袋店で始めました。
ピープルポートさんは難民の方たちの就業支援に取り組んでいる会社です。私たちが買い取ったパソコンをピープルポートさんに整備してもらい、ソフマップのサポートをつけて販売するという形にしています。リユースが環境だけでなく、人権課題の解決にもつながる形を目指しています。
子どもたちへの取り組みも力を入れていると聞きました。
「リユースの日」にあわせて、パソコン組み立てワークショップを開催しています。ノートパソコンを分解して、パーツから組み立て直して電源を入れる体験です。その前に「パソコンを作るのにどれほどの資源が必要か」「水をどのくらい使うのか」といった環境負荷に関するクイズをして、楽しみながらリユースの価値を知ってもらう内容にしています。今年はピープルポートさんも一緒に参加してくれます。
まだリユースを知らない子どもたちや学生の皆さんに「中古を選ぶことが環境のためになる」と伝えていく場をつくることが、今一番力を入れたいことです。
最後に、ソフマップとして今後目指していく姿を教えてください。
「ソフマップだからできる循環型社会の形成」、ここに尽きます。買取があり、販売があり、サポートがある。この三本柱を活かして、お客様が「売ることを当たり前に」選べる社会をつくっていきたいと思っています。
弊社では、 「リユースの先にあるのは環境課題だけではなく、人の問題解決でもある」という想いを強く持っています。新品を次々と作って消費し続ける社会から、一つのものを使い続けて循環させる社会へ。その転換期において、ソフマップが変化を牽引する一翼を担えたら、これほど誇らしいことはありません。


