1分でわかる!gooddo編集部まとめ

  • キーコーヒーが「コーヒーの未来部シリーズ」第4弾として『エチオピア JARC74148』を発売。
  • エチオピアのジマ農業研究センター(JARC)が発表した品種『74148』を商品化。
  • ベルガモットのような酸味とピンクローズの香りが特徴の浅煎りコーヒー。
  • コーヒーの多様性を守る取り組みとして、気候変動に脆弱な小規模生産者を支援し、持続可能なコーヒー生産を目指す活動の一環で環境省案件に取り組んだ。

「2050年、コーヒーが飲めなくなる?」——学生たちに投げかけられた“未来への問い”

コーヒー好きの皆さん、2050年コーヒーが飲めなくなるかもしれないということを知っていますか?今、気候変動の影響でエチオピアのコーヒー生産は危機に瀕しています。

「皆さん、エチオピアが『アラビカ種コーヒーのふるさと』と呼ばれていることをご存じですか?」

2025年9月、キーコーヒー株式会社が開催した大学3年生向けイベント「オープン・カンパニー」。未来を担う学生たちが熱心に耳を傾ける中、スクリーンに映し出されたのは、緑豊かなエチオピアのコーヒー農園。しかし、その穏やかな風景の裏には、静かなる危機が迫っています。

「『コーヒーの2050年問題』とキーコーヒーの取り組み」と題した講義で登壇したのは、同社の「コーヒーの未来部」の藤井さんと福永さんです。藤井さんは実際に2024年現地調査へ赴いた一人として、その口調には実感がこもります。

藤井さん

私たちが向き合っているのは、コーヒーの持続可能な生産という大きな課題です。その背景には地球規模の『気候変動』があります 。

世界のコーヒーの約6割を占める「アラビカ種」は非常に繊細な作物。コーヒーの栽培の必要条件のひとつに、乾季と雨季の安定したサイクルがあります。この自然のサイクルが、美味しいコーヒーには不可欠なんです 。この繊細なバランスを揺るがしているのが、『コーヒーの2050年問題』です。

このまま気候変動が続くと、高品質なアラビカ種の栽培に適した土地が、2050年までに半減してしまう可能性があるという衝撃的な予測です 。

この大きな問題に対し、「珈琲とKISSAのサステナブルカンパニー」を2030年を見据えたメッセージに掲げるキーコーヒーが、未来を守るための挑戦を学生たちに共有しました。

未来を創る挑戦。キーコーヒー「コーヒーの未来部」の使命

この危機に立ち向かうため、2022年4月1日にキーコーヒーでは部署を横断した、コーヒーのサステナビリティ活動を推進する専門部署「コーヒーの未来部」を結成しました。「コーヒーの未来部」の部長は、同社社長。世界的なコーヒーの研究機関「ワールド・コーヒー・リサーチ」(WCR)と協力するなど、さまざまな活動をしています。

福永さん

『コーヒーの未来部』は、商品開発や調達など、各分野の専門知識を持つメンバー10名ほどで構成されています。

私たちの使命は、事業を通じて持続可能なコーヒー生産を実現すること。

これは企業の社会的責任(CSR)だけでなく、キーコーヒーの未来そのものに関わる重要な使命です。企業の成長と社会価値の創造を両立させるCSVの考え方を核に、生産地が抱える課題の解決を目指しています。

その活動の一つが、コーヒーの原産国エチオピアでの取り組みです。2024年には環境省から「気候変動に脆弱な小規模コーヒー生産者の明るい未来提案業務」を受託しました。その一環として、現地での調査やセミナーを実施。気候変動に適応する栽培方法や精選技術を、現地の生産者や研究者と連携しながら提案し、持続可能なコーヒー生産の道を模索してきました。

誇りと伝統の国で見た現実。コーヒー文化と気候変動の影

エチオピアにとって、コーヒーは単なる飲み物ではなく、国の経済を支える大動脈。コーヒーはエチオピアにとって最大の輸出商品であり、国の総輸出額の30%を占めています。GDP全体に占める割合で見ても4〜5%に達しています。

さらに重要なのは、人々の暮らしとの関わりです。エチオピアの人口の25%以上、実に1,500万人から2,000万人の人々が、コーヒーの生産から加工、輸出に至るまでのいずれかの過程に関わって生計を立てています。つまり、コーヒー産業の動向は、1,000万以上の人の生活に直接的な影響を与えるのです。

このように国の経済と国民の生活に深く根ざしているからこそ、気候変動によるコーヒー生産への打撃は、エチオピアにとって国家的な課題となっています。

藤井さん

首都のアディスアベバは標高2,000m以上の高地にあり、私たちが訪れた間にもどんどん道路が建設されるなど、非常に活気がありました 。一方で、コーヒーの産地へ行くとロバが荷物を運ぶ昔ながらの風景が広がり、人々は木と土壁で作られた伝統的な家に住んでいます 。

コーヒーの収穫は、本来乾季に行いますが、この時期に突然雨が降るのです。ウォッシングステーションで乾燥させている貴重なコーヒー豆を、生産者の人々が慌ててビニールシートで覆って守る。そんな光景を目の当たりにしました 。雨に濡れると乾燥がうまくいかず、カビが生えて品質が落ち、収入が絶たれてしまう。生産者の皆さんの不安は、本当に切実です

コーヒーの原産国エチオピアでの挑戦 - 現地と共創する未来

目の前の課題に対し、現地の研究機関「ジマ農業研究センター(JARC)」と協力し、「コーヒーの未来部」では具体的な行動を起こしました。

1. 対話のためのツール作り

まず作成したのが、現地の生産者との「対話」を促すためのコミュニケーションツールです 。

藤井さん

気候変動がどういうもので、どう対策すればいいのかを伝えるために、写真やイラストをたくさん使った冊子を作りました 。これは日本語だけでなく、英語、そして現地の公用語であるアムハラ語にも翻訳し、現地の方々が直接読めるように工夫したものです 。

2. 知識の共有と実践的な提案

次にJARCと協力し、生産者やコーヒーの研究者を集めて現地でセミナーを開催 。先ほどのツールを使い、気候変動の現状を共有した後、彼らに提案したのが「ハンドパルパー」という手動の機械の活用です 。

藤井さん

収穫したコーヒーチェリーは、果肉が付いたままだと雨季には乾燥しにくい。そこで、このハンドパルパーで先に果肉を剥いてしまえば、突発的に雨が降るなかでも乾燥しやすくなり品質が安定します、という提案をしました 。

生産者の方々からは『ぜひその機械の設計図が欲しい』という声もいただき、非常に手応えを感じましたね 。

3. 未来へ繋ぐ「人」との絆

そして何より大きな成果となったのが、現地の人々との信頼関係の構築でした。

藤井さん

今回のプロジェクトを通じて、JARCの研究者の方々と非常に良い関係を築くことができました 。その後、彼らを日本にお招きして、日本のコーヒー文化や研究機関を視察してもらうといった交流も生まれています 。この『人』との繋がりこそが、今後の継続的な支援活動における何よりの財産だと感じています 。

希望の光、その名は『エチオピア JARC74148』

そして2025年9月19日、その挑戦と絆の結晶として「コーヒーの未来部シリーズ」から、『エチオピア JARC74148』が発売されました。このコーヒーは、エチオピアのジマ農業研究センター(JARC)が、気候変動や病害への対策として発表した品種『74148』を商品化したものです。まさに、持続可能なコーヒー生産の「希望の光」と言える存在です。

福永さん

今回のプロジェクトで深い関係を築いたJARCへの敬意と、取り組みの成果を形にするために、この商品を開発しました。『74148』は病害に強く、気候変動の影響を受けやすいエチオピアの小規模生産者を支えるサステナブルな品種です。この一杯には、エチオピアの豊かな自然と、気候変動に立ち向かう人々の想い、そして私たちの未来への願いが詰まっています。

『エチオピア JARC74148』は、その繊細な個性を最大限に引き出すため、じっくりと時間をかけて浅煎りの「シナモンロースト」で焙煎されています。その味わいの特徴は、ベルガモットを思わせる柑橘系の酸味と、ピンクローズのような甘く華やかな香り

福永さん

エチオピアコーヒー特有の、透き通るようなクリーンな味わいが特徴です。商品化にあたり、JARCが発表した数ある品種の中からテイスティングを重ね、『これが美味しい』と確信できるものを選び抜きました。

この商品は、キーコーヒーの公式オンラインショップや全国の直営ショップで数量限定で販売されます。価格は100g(豆)で1,728円(税込)。特別な一杯を楽しみながら、エチオピアの未来を支える活動に思いを施してみませんか。

未来のために、私たちが選ぶ一杯

コーヒーは、私たちの日常に欠かせない存在です。しかし、その裏には気候変動や病害と戦う生産者たちの努力があります。

藤井さん

日本では『エシカル消費』がまだ少し特別なことのように捉えられがちです。だからこそ私たちは、『美味しいものを手に取ったら、結果的に未来のため、社会のために繋がっていた』という形を目指しています。『エチオピア JARC74148』を通じて、自分の選んだ一杯が、遠い国の生産者の未来を応援しているんだ、と感じていただけたら嬉しいです。

『エチオピア JARC74148』を味わうこと。それは、コーヒーの未来を守る活動に参加することに他なりません。この特別な一杯を味わいながら、持続可能な社会の実現に貢献しませんか?

関連画像・資料

問い合わせ先情報

【解説】エチオピアのコーヒーと気候変動の関係

『74148』ってどんなコーヒーなんですか?

gooddo編集長

『74148』は、エチオピアのジマ農業研究センター(JARC)が発表したコーヒー品種です。この品種は、病害に強く、気候変動の影響を受けやすいエチオピアの小規模生産者を支援するために作られました。

エチオピアが「アラビカ種コーヒーのふるさと」と呼ばれる理由は何ですか?

gooddo編集長

エチオピアはアラビカ種コーヒーの原産地と言われており、世界中のコーヒー文化のルーツとも言える場所です。しかし、気候変動や病害の影響で生産に影響が出ており、品種の多様性を守ることが重要視されています。

気候変動がコーヒーにどんな影響を与えるんですか?

gooddo編集長

気候変動によって気温や降水量が変化すると、コーヒーの栽培に適した環境が減少します。また、病害虫の発生が増えることで、生産量や品質が低下するリスクも高まります。

私たちがコーヒーを選ぶとき、どんなことを意識すればいいですか?

gooddo編集長

持続可能な生産を支援する商品を選ぶことが大切です。たとえば、今回の『エチオピア JARC74148』のように、生産者支援や環境保護に取り組む企業の商品を選ぶことで、コーヒーの未来を守る一助になります。また、コーヒーの背景にある社会問題について知ることも大切です。

公式オンラインショップでも購入できるので、ぜひ見てみてくださいね。

コーヒーを通じて社会貢献ってできるんですか?

gooddo編集長

もちろんです!コーヒーは世界中で愛される飲み物ですが、その生産には多くの課題があります。持続可能な生産を支援する商品を選ぶことで、気候変動や生産者の生活改善に貢献できます。日常の一杯が、未来を変える力になるんです!