サステナビリティのリーダーに密着!
ビジネスと社会貢献を両立する人と企業の深掘りシリーズ

「伝統は進歩を促し、未来を守る力になる」――そう語るのは、大阪・関西万博2025に出展するUAEパビリオン副コミッショナー・ジェネラル兼クリエイティブ・ディレクターのシャイカ・アル・ケトビさん。

テーマは「大地から天空へ」。砂漠の厳しい自然に育まれた知恵と、未来を切り拓く技術革新を重ね合わせることで、UAEは持続可能な社会の姿を描きます。建築素材にはナツメヤシの廃材を用い、エネルギー分野では水素や太陽光の挑戦を紹介。

さらに日本とUAEを結ぶ長年の信頼関係が、このパビリオンの背景に息づいています。未来世代に伝えたい想いと、万博を“未来への投資”と捉えるビジョンを伺いました。

取材・編集:gooddo編集部

伝統と未来をつなぐ「大地から天空へ」

テーマは「大地から天空へ」です。象徴となるナツメヤシの木は、深く大地に根を張りながら天空へと枝葉を広げています。

その姿は、私たちが大切にしてきた伝統と、未来へ挑戦し続ける精神を同時に体現しています。パビリオンでは、歴史や文化を基盤に、宇宙探査・医療革新・持続可能性といった分野での取り組みを紹介しています。

来場者の皆さまには、没入型の展示を通じて「伝統と革新が共鳴し合い、未来社会を形作っていく」という感覚を体験していただきたいと考えています。

実は、初めて万博に参加したのは1970年の大阪万博でした。

当時はまだ建国前のアブダビとしての出展でしたが、その経験は「国際社会における学びと対話の場」としての万博の意義を私たちに強く示してくれました。以来、UAEは万博を通じて常に国際的な協力や共創を進めてきました。

今回の2025年大阪・関西万博では、日本と再び深い交流を重ね、未来社会のデザインというテーマに積極的に貢献したいと考えています。

私たちが大切にしているのは「大志と人間性」「真正性と寛大さ」「楽観主義と忍耐力」といった価値観です。

これらは、砂漠という厳しい自然環境の中で育まれた精神でもあります。

同時に、気候変動や資源の持続可能な利用といった地球規模の課題に対して、文化と科学技術の両面から解決策を模索し、国際社会と共有することを使命としています。

だからこそ私たちは、責任あるエネルギーを推進し、気候変動への解決策を先導するADNOC(アブダビ国営石油会社)のようなパートナーと協力しているのです。

私にとって、このプロジェクトは「UAEの物語を未来世代につなげたい」という強い想いから始まっています

大阪・関西万博という舞台を通じて、日本との長年の信頼関係をさらに深めながら、若い世代が希望と自信を持ち、地球規模の課題解決に挑戦できるきっかけをつくりたいのです。

建国以前のUAEでは、人々の暮らしは自然の限界に大きく左右されていました。

乏しい水を分かち合い、ナツメヤシから食糧・住まい・文化を得る――そうした生活の中で、持続可能性は「選択肢」ではなく「生きるための知恵」として培われてきました。

私自身もその価値観に深く影響を受けており、だからこそ現在のプロジェクトを通じて「持続可能性を次世代につなぐこと」に強い使命感を抱いています。伝統や文化に根ざしながらも、未来に向けた革新を示すこと。それこそが、私たちが果たすべき役割だと考えています。

サステナビリティを体現する展示と建築

建築そのものに持続可能性を組み込みました。たとえば、ナツメヤシの廃材「yereed(ヤリード)」や種を活用した素材「DateCrete(デーツクリート)」を取り入れています。

また、最大で高さ16メートルのナツメヤシの柱90本が立ち並ぶ“オアシス空間”を形成し、日本とUAEの木工技術協働によるランドマーク的建築となっています。日本の木工技術や里山の景観と、UAEのオアシス農法を組み合わせ、伝統的な知恵を再解釈するデザインとなっています。

これにより、建築がサステナビリティの象徴そのものとなっています。

さらに、ADNOC(アブダビ国営石油会社)が公式サステナビリティパートナーの一員として参画し、「サステナビリティ分野の先駆者たち」を紹介する展示を通じて、再生可能エネルギーや効率的な資源利用の具体的な取り組みを伝えています。

来場者は、太陽を追尾する24枚のソーラーパネル型インスタレーションやインタラクティブスクリーンを通じて、UAEの再生可能エネルギーやマングローブ植林などのプロジェクトを学ぶことができます。

とても印象的だったのは、ユースアンバサダーによる案内を受けた来場者が「単なる展示ではなく、人の物語として伝わってきた」と話してくださったことです。

また、多くの方が「再訪したい」と感想を寄せてくださっています。

こうした声は、パビリオンが単なる展示空間ではなく、文化的な対話の場として機能していることを示しています。

私たちにとって大きな励みであり、未来につなげる力になっています。

私たちが未来世代に伝えたいのは、「自然と共生する選択は、今の世代の責任である」ということです。

今日、私たちがどのように資源を使い、環境と向き合うかによって、次の世代の可能性は大きく変わります。だからこそ一人ひとりが、自らの行動が未来を形づくることを強く意識してほしいのです。

パビリオンを訪れた方々が、自分にできる小さな一歩を考えるきっかけになれば嬉しく思います。

未来への投資としての万博

私たちは万博を「一過性のイベント」ではなく「未来への投資」と捉えています。

終了後も、ここで得られた知見やネットワークを活かし、教育・技術・持続可能性の分野で新しい取り組みを広げていきたいと考えています。

また、UAEと日本が協力し合い、社会や環境の課題に共に取り組むプラットフォームを継続的に築いていくことを目指しています。

UAEには、砂漠という厳しい環境の中で培われた「オアシス農法」や、ナツメヤシを食糧・住まい・文化資源として余すことなく活用する知恵があります。

これは単なる技術ではなく、「資源を無駄なく使い、自然と調和して暮らす文化的な態度」そのものです。こうした知恵は他国でも応用可能であり、持続可能性を考える上で大切なヒントになると考えています。

UAEと日本は、環境に対する敬意や未来世代への責任という価値観を共有しています。

この万博を通じて、両国の人々が互いに学び合い、共により良い未来を築いていけることを願っています。

日本の皆さまにはぜひパビリオンでの体験を通して、「自分にできる小さな一歩」について考えていただければ幸いです。

その一歩が、未来世代にとっての大きな希望につながると信じています。

万博会期中には、宇宙・医療・サステナビリティ・文化・外交などをテーマにした40以上のイベントが予定されています。トークセッションやワークショップ、アートパフォーマンスなど、訪れる人がUAEのビジョンに触れ、交流できる多彩なプログラムが用意されています。

さらに館内では、本格的なエミラティ料理を味わえるレストランも併設。伝統的なスパイス料理やデーツを使ったスイーツを楽しみながら、文化の一端を体感できます。

なかでも注目は、UAEの日(9月19日)。この日には大規模なセレモニーや特別イベントが開催され、文化と未来へのビジョンが華やかに表現されます。この機会にぜひUAEパビリオンへお越しください。

そして何より、日本とUAEは長年にわたり深い信頼と友情を育んできました。このパビリオンは、両国の人々が互いに学び合い、新しい未来を共に描く場でもあります。日本の皆さまと、その一歩をぜひここでご一緒できれば嬉しく思います。

UAEパビリオン | EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイト

大地から天空へ—UAEが拓く未来への挑戦 大地に根を張り、天空へと伸びるナツメヤシは、UAEの人々の精神を象徴する証です。イマーシブな空間とマルチセンサリーな体験を通…

解説:UAEパビリオンのパートナー企業・組織

Space42(展示「宇宙探検家たち」)

人工衛星通信、地理空間情報、人工知能を統合し、世界中の顧客に向けて提供することで、宇宙テクノロジー分野に革新をもたらすことを目指す、UAE拠点のスペーステック企業です。

2024年にBayanat社とYahsat社の合併によって設立され、現在は150を超える国々で事業を展開し、世界人口の80%にリーチしています。

PureHealth(展示「医療・健康分野の貢献者たち」)

病院、クリニック、診断、保険、薬局、ヘルステックを統合し、長寿の科学を推進するアラブ首長国連邦最大の統合型ヘルスケアネットワークです。

包括的な医療保障と質の高いケアの提供に注力し、科学的イノベーションと技術の進歩を通じて、人々がより長く、より充実した人生を送れるよう支援することを目指しています。

ADNOC(展示「サステナビリティ分野の先駆者たち」

アブダビ政府が所有する多角的なエネルギーグルー プで、エネルギー価値連鎖全体にわたって、絶え間なく変化するエネルギー市場のニーズに責任を持って対応しています。ADNOCは、世界で最も炭素強度が低い石油・ガス生産者の 中でもトップクラスに位置しています。

アブダビ文化観光局(展示「文化の継承者」)

アブダビ文化観光局は、アブダビの文化、観光、クリエイティブ分野の持続可能な成長を促進し、経済の発展を促すとともに、グローバルな目標の達成に貢献しています。

そのためにアブダビ文化観光局は、世界中から人が訪れる目的地としての認知を決定づける組織とのパートナーシップにより、首長国のポテンシャルに関する共通のビジョンを中心に、活動や投資を調整し、革新的なソリューションを提供し、最高のツール、政策やシステムを用いて文化・観光業界の支援をしています。

2025年大阪・関西万博におけるUAEパビリオンについて

2025年の大阪・関西万博に出展するUAEパビリオンは、「大地から天空へ(From the Land to the Sky)」をテーマに、UAEの伝統文化と最先端技術が共鳴する空間を五感で体験できる設計となっています。

ナツメヤシの廃材を再利用した200万本の柱で作られた建築空間は、オアシスを思わせる静けさと温かみに満ちています。展示では、宇宙開発、ゲノム医療、再生可能エネルギーなど、UAEが取り組むさまざまな“未来への挑戦”がストーリー仕立てで紹介され、子どもから大人まで楽しめる仕掛けが満載です。

館内には、本格的なエミラティ料理を味わえるレストランも併設されており、訪れる人が「文化に触れながら、心からくつろげる場所」としても親しまれています。

2025年4月13日から10月13日までの万博会期中、毎日午前9時から午後9時まで(最終入館午後8時半)一般公開。日本とUAEの友好の象徴として生まれたこのパビリオンで、“あなただけの未来”と出会ってみませんか?

▶ 詳細は公式サイトをご覧ください。

UAE Pavilion | Earth to Ether

Earth to Ether is a multisensory journey through UAE's heritage and innovation, uniting cultures to shape a sustainable, thriving future.